05/07/02 JR西日本の事故への馬鹿げた論評
この程度のサイトの書き込みでも、重いテーマや調べものがある場合は中々書き進めません。
常に書きたいテーマを手帳やパソコンにメモしているのですが、易きに流れて書きにくいものは、どんどん後
回しになっていきます。そして、その殆どは日の目を見ることはありません。
今回のテーマもそんな書き難いテーマですが、どうしても書いておかねばと言うテーマです。
6月5日付け日本経済新聞の「中外時評」と言う囲みの署名記事(論説委
員:
吉野源太郎)に、経団連の機関紙と言われる「日本経済」新聞らしい論理が展開されています。
事故と経営者の責任について書いた後、「ただ同情の余地はある」として、JR西日本の効率化が事故の原因であると言うキャンペーンは間違っていると論じ
ています。
私は今回の事故の原因の一つは、JR西日本の安全を無視した効率主義(金儲け主義)にあると思っておりますので、対立する考え方であり興味深く読んでみ
ました。
◇JR各社は多くの赤字ローカル線を抱えており、都市部の稼ぎをローカル線の維持につぎ込んでいる。
◇安全のためには、巨額の投資が必要となる。
◇そのためには、赤字ローカル線を切り捨てるべきだ。
◇赤字ローカル線を廃止しても、これだけ自動車交通が普及した社会では地域生活や経済に影響がない。
と書かれています。
なんと、乱暴な論理でしょう。
少なくとも赤字ローカル線を切り捨てて、地域生活や経済に影響がないとの意見には賛成できません。
地方に旅すれば、鉄道がなくなった地域がどんな状況になっていったのかがよく分かります。
・旧市街と呼ばれるところでは、廃業した商店が並び、街中を歩いているのは老人ばかりです。
・山間部の田んぼは、耕作されずに荒地になったままです。
・屋根や壁が崩れ落ちたまま放置された家が散在します。
・幹線を外れたところでは、ガソリンスタンドも廃業しています。
人が集まるのは、ロードサイドの大型商業施設です。
最後に 「JR西日本は、山陽新幹線と近畿圏の都市交通だけの会社になるかもしれない。それでも惨事を繰り返すよりよほどいい。安全には、より効率的な
経営体制が必
要なのだ」と書いています。
効率(金儲け)第一主義の考え方です。
力のない私には、この程度しか書けませんが、元京都府立大学学長の広原
盛明さんのサイトで的確に反証されて
いますので紹介します。「JR西日本の脱線事故について」(つれづれ日記6月8日)
一部引用させていただきます。
◇「なぜ国鉄が赤字路線だらけとなり、トヨタ自動車が
世界一の黒字を生み出すまでに成長したのかということだ。それは政府が自動車産業に対しては『道路特定財源』という国民の税金を何十年にもわたって湯水の
如く注ぎ込み、国土の隅々まで自動車高速道路を建設する一方、国鉄に対しては鉄道建設費用を『借金』として計上してきたからではないか。自動車が売れるた
めには道路整備が必要不可欠だ。もし高速道路建設をトヨタ自動車など自動車資本に義務付け、その費用を『借金』として計上したならば、トヨタ自動車などは
赤字まみれでとっくの昔に倒産していただろう。自動車産業にはタダで高速道路を提供しながら、国鉄には鉄道建設費用の借金返済を求める。こんな不公平な交
通政策を何十年にもわたって取り続けてきたところに、国鉄の経営が破綻した根本原因がある。
◇鉄道事業はいったい何のためにあるのか。これからの高齢社会に備えて「国民の足」といわれる国民の交通する権利を守ること(高齢者は運転ができない)、
自
動車交通の数十倍もエネルギー効率性のよい鉄道交通を積極的に活用してエネルギーを節約し地球温暖化ガスの増加に歯止めを掛けること(一番「環境にやさし
い」乗物は鉄道なのだ)、マイカー利用で歪められている国民の健康生活や家計構造をバランスのとれたライフスタイルに戻すこと(ウオーキングブームを見
よ!)、鉄道を国土幹線として整備して自然に包まれた美しい日本の国土を守り持続可能な観光産業を発展させることなどなど、その存在意義は数限りない。
最後に「日経新聞への抗議行動
をも含めて何らかの意思表示が求められる」と書かれています。
力のない私は、拙いサイトにこのような記事を紹介することしかできませんが。
ビル・トッテンさんは「脱線事故は民営化が原因 」と題して、民営化:株式公開が事故の原因だと述べられています。
上場企業は、株価を上げるか、高配当をだすかして株主を設けさせることが主要な目的の一つとなる。
民営化によって、株主のために早く大きな儲けを出さねばならず、値段を上げたり、投資や経費を削減したり、利益率の高い製品やサービスに絞ってくる。値
上げは富裕層には影響がないが低所得者には大きな負担となる。
短期的な利益増のための経費削減は、安全対策を怠る結果となる。
その結果の事故だと書かれています。
インターネット新聞JANJANにも同種の記事がありました。
「便乗・悪乗りとも言える日経新聞のすりかえ論法」(2005/06/11)
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