05/11/17 ”平成版・治安維持法”が成立する?!
「残日録」(05/11/01)で紹介した、日経BP社のWebサイトに連載されている森永卓郎さん
の「小泉構造改
革をどう
生きるか 〜成果主義・拝金思想を疑え!〜」から、「右傾化への歯止めがなくなった小泉政権〜報道の間隙を縫って“平成版・治安維持法”が成立す
る!〜」と、少々長くてセンセーショナルなタイトルがついたコラムを紹介します。
先の総選挙の結果を受けて、森永さんは予想される3つのリスクとして「増税」「インフレ」「戦争」を上げておられました。
今回のテーマは「戦争」です。
◆前原民主党
総選挙での自民党の圧勝以上に、民主党の党首に前原誠司氏が選ばれたことの方が戦争へのリスクは高くなっていると述べられています。
前原氏は「自民党よりも右寄りの政策といっても差し支えない。そういう人物が野党第一党の代表に選出されたこと自体、世の中の『空気』が、そ
のまま民主党の代表選挙に及んだことを感じさせる」と
■前原語録
前原氏の発言をGoogleのニュース検索で見てみます。
自民党より「右」よりを感じさせる発言が目立ちます。
◇「個別的自衛権、集団的自衛権の違いはないという考えに立つべきで、憲法改正の議論では自衛権をしっかり明記することが必
要だ」(衆院憲法調査会 2000/5/11)
◇「憲法を改正し九条に自衛権を明記して、集団的自衛権の問題もブレークスルー(突破)しなければいけない」(日米安全保障戦略会議
03/11/20)
◇「九条に自衛権を明記し、交戦権放棄の現行第二項は削除する。そして『国際貢献』を、前文のような形ではなく条文として明確に位置付ける」(「諸君!」
04/9号)
◇海外の敵基地攻撃能力の保有を政府に迫り、議場から「民主党にしておくのはもったいない」とのヤジがあがりました。(衆議院本会議 05/3/15)
◇「もっと国土から外に出たところに防衛ラインを引くといった仕組みに変えていかなければならない」「戦闘機にしても、将来的には長距離を航行
し、敵基地を叩(たた)くことも考えなければならなくなるかもしれない」「当然、トマホーク(ミサイル)は買ってもいい」(「日本の防衛 7つの論点」宝
島社)
◇「先制行動を認めるべきであるというブッシュ・ドクトリンの考え方も理解できる面もある」「ブッシュ・ドクトリンの共通認識化を国連のなかで図っていく
ことも大変大きな意味がある」(日米安全保障戦略会議 04/5)
◇「法人税の率はかなり低くしなければ、多国籍企業は日本を見放し、本社機能を他国に移してしまいます。あるいは海外からの投資を呼び込むには、どういう
減税が必要になるのか――。そうした大胆な改革を進める一方で、ある程度の財政基盤をも維持しなければなら
ないとすれば、当然ながら、直・間比率、消費税
率の見直しという問題は不可避でしょう」(「諸君!」04/9号)
◇「政府税制調査会は増税を議論している。将来的な増税は必要かもしれないが、天下りや談合、ムダ遣いをほったらかしにしておいて増税とは許されない」
(05/8/31 埼玉県川越市)
「民主党新代表 前原氏 九条二項の削除明言 “巨大与党”と改憲競う」(しんぶん赤旗
2005年9月18日)
◇「(憲法改正について)国家の自然的権利である自衛権が書かれていないのはおかしい」「自衛権を明記すれば集団的自衛権も個別的自衛権も認められる」
「(自民党との大連立は)あり得ない選択肢だ」(日本記者クラブ 05/10/17)
「民主党の前原代表、自衛権の憲法明記を改めて強調」(日本経済新聞 2005年10月17日)
◇「期待を込めてエールを送りたい。実力者の方が多いと思う。それだけ首相の本気さが出ているのではないか。奇をてらう人事はあまりなかった」(第3次小
泉改造内閣の組閣について 05/11/1)
「民主・前原代表、改造内閣に『期待を込めてエール』」(朝日新聞 2005年11月 1日)
◆共謀罪
森永さんは「既遂(実行)」「未遂」「予備」の前の段階の「共謀」を罪とする刑法等の改正の動きが、将来、日本が戦時体制になったとき、戦前の治安維持
法と同じように施政者に都合の悪い人たちを取り締まるために使われるのではないかと危惧されています。
「共謀罪」が成立すると、仲間同士で「○○を殴ってやろう」などと話をしただけで暴行の予備罪に問われることになりま
す。
法案が成立したからと、現実に居酒屋での会話から逮捕されることはなく、カルト集団などの取り締まりに使われるのでしょうが、施政者が自分たちの都合の
悪い人たちを、話をしただけで取り締まることができる法律です。
「共謀罪」についてはマスコミが殆ど報道しませんから、私たちも良く分からないままです。
日弁連の「共謀罪に反対する意見」では「人々の会話・電話・メールの内容そのものが犯罪となるため、盗聴法の適用範囲の拡大、メールの傍受などが次々と
提案され、監視社会をもたらす結果となる」と書かれています。
◆日弁連が取り組む重要課題「日弁連は共謀罪に反対します」を引用します。
現在、政
府において、共謀罪を導入するための法案が検討されています。
「共謀罪」とは、犯罪が実際に発生する以前、関係者が犯罪を起こすことを合意した段階から処罰できるとするものです。殺人や強盗でも、予備的な準備行為が
あってはじめて犯罪とされていたのが、共謀罪では、準備行為をしていなくても「合意」してさえいれば犯罪となります。しかも、共謀罪は、殺人や強盗だけで
なく、窃盗や詐欺、傷害などほとんどの主要犯罪について設けられ、その数は500以上に及びます。
例えば、同じ会社に所属するAさんとBさんが、Cさんを「やってしまおう」という会話を交わしただけで、AさんとBさんが殺人、傷害いずれかを合意したも
のとして共謀罪が成立する可能性があるのです。これでは、単に疑わしい考え、悪い考えを抱いているらしいというだけで人が処罰されるような事態を招きかね
ません。
また、共謀罪が導入されれば、犯罪捜査のあり方が変わります。共謀罪では人々の会話・電話・メールの内容そのものが犯罪となるため、盗聴法の適用範囲の拡
大、メールの傍受などが次々に提案され、監視社会をもたらす結果となりかねません。
このような立法が、国連国際(越境)組織犯罪防止条約を理由に制定されようとしており、2003年の通常国会から審議されています。一旦は廃案となりまし
たが、2005年の衆議院解散総選挙後の特別国会に再度上程され、継続審議の扱いとなっており、予断を許さない状況が続いています。
日弁連は、共謀罪の導入に強く反対し、運動を展開していきます
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共謀罪:「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」
森永さんは「おそらく、そう遠くない将来に、日本の再軍備、戦争の危険が表面化するだろう。その可能性はかなり高まっている」と言われています。
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