06/01/09 映画「いつか読書する日」
寒波の一休みとの天気予報でしたが、寒
さに負けて映画館に足を運ぶことにしました。
思い立ってから、インターネットの映画情報を検索しますが、見たい映画がありません。
しばらく休館していた十三(じゅうそう)の第七藝術劇場のサイトを覗いて見ると「いつか読書する日」というのが上映中とのこと、田中裕子さんと岸辺一徳さんが出演で熟
年男女の恋愛物語、程度の予備知識で見に行ってきました。
劇場のスタッフも、その他一切休館前と変わっていないようです。
1700円のところ、今日は男性客は1000円とのことです。
劇場の入りは3割程度、ほとんど私と同年代の男女です。
良い映画でした。
日本にも、大金をかけて、大掛かりな宣伝をし、メジャーな配給ルートで、大型劇場で上映される映画だけでなく、小さな劇場で上映されている質の良い、完
成度の高い映画があることをうれしく思います。
本も文化ですが、映画も文化です。
大場美奈子(田中裕子)と高梨槐多(かいた・岸部一徳)は高校の同級生で付き合っていたのですが、美奈子の母と槐多の父が交通事故で死んでしまいます。
美奈子と槐多は、この事件により、それぞれのことを無視するように生きていきます。
美奈子は50歳になった今も独身です。朝は坂道の多い故郷の街で牛乳配達をしています。槐多の家にも母の友人(渡辺美佐子)の家にも重い袋を肩にかけて
配達しています。
また、昼はスーパーでレジ係として働いています。
一日の終りに、ベッドの中での読書が唯一の楽しみです。
そんな中、美奈子がラジオ番組にリクエストカードを出します。
「私には大切な人がいます。でも私の気持ちは絶対に知られてはならないのです……」
一方、槐多の妻(仁科亜希子)は死の床にあります。
死を前にした槐多の妻は、槐多が飲まない牛乳を取っていること、美奈子のリクエストカードを聴いたことで、槐多と美奈子が自分自身の心を偽りそれぞれの
人生を生きていながら、互いに心惹かれているのではないかと気付きます。
そして、自分の死後は二人で暮らして欲しいと言い残して死んでいきます。
◆田中裕子さん、渡辺美佐子さんの演技は良いですね。
平板な顔立ちの田中裕子さんが、顔に表情を表さない演技は良かったです。
岸部一徳さんは、段々渋い役者となって行くのでしょうね。
香川照之さんは、美奈子が働くスーパーの店長役でしたが、余り存在感のない役回りでした。
渡辺美佐子さんの喫煙シーンがありましたが、夫は英文学者、自身も作家という設定では喫煙シーンも致し方ないのでしょうか?
◆親の恋愛行動の末の事故が二人の仲を裂き、その後も二人は同じ町に住みながらも目も合わさないような関係を続けていきます。
30数年も互いの思いを秘めて、それぞれ別の人生を生きていけるものなのでしょうか?
すごい、思いで繋がれていたのですね。
◆槐多の妻の死後、二人は二人の親が交通事故死した現場に花を手向けに訪れます。
そして、その夜結ばれます。
槐多が「長く我慢してきたことをしたい」というと、美奈子は「いままでしたかったこと、全部して」とこたえます。
おじさんとおばさんのベッドシーンは、節度もあり中々良いものでした。
美奈子の台詞は耳に残りました。
◆二人が結ばれた翌日、槐多は川でおぼれそうな子供を助けるために川に飛び込みます。
「これからどうして生きて行くの?」との母の友人(渡辺美佐子)から聞かれた美奈子は「本を読んで生きて行くわ」と答えます。
「長かった恋愛も終わったのです」という渡辺美佐子さんのナレーションで幕となります。
◆渡辺美佐子さんは夫の痴呆の世話、槐多は妻の看病、市役所に勤める槐多の周りで起こる子育てを放棄した若い母親のことなど時代の課題が描かれています
が、今ひとつの描き方だったように思います。
主たるテーマでなかったからでしょうか?
◆美奈子は、坂の多い街を牛乳壜をバッグに詰め込んで配達に走り回ります。ロケ地は尾道かと思いましたが、もっと大きい町のようです。エンディングロール
を見ていたらロケ地は長崎とのこと。
長崎も行ってみたい町の一つになりました。
映画の公式ホームページのURLはhttp://www.eiga-dokusho.com/で
す。
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