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06/08/30 ビラ配りは犯罪?
 04年12月、東京都葛飾区のマンショ ンの郵便受けに共産党の都議会報告などのビラを配布していた男性が、住居侵入罪で逮捕、起訴されていた事件の判決 が 28日に東京地裁でありました。
 判決は「ビラ配りを処罰すべきだとの社会通念までは確立していない」として無罪となりました。

 ここ数年、共産党や市民団体など国の政策に反対する人たちが行う政治的ビラの配布を狙い撃ちにするような事件が相次いでいます。
 04年立川市の自衛隊宿舎への自衛隊宿舎で「イラク派兵反対」のビラを配った3人が逮捕され、一審は無罪(04年12月)、二審で逆転有罪(05年12 月)となり現在も裁判が続いています。

 04年3月、しんぶん赤旗号外などを配っていた社会保険庁職員が国家公務員法違反で逮捕、起訴された事件では有罪判決(06年6月)を受けています。こ の男性は逮捕前から公安警察に尾行されビデオ撮影をされていました。

 政治的ビラの配布が住居への不法侵入や国家公務員法違反として逮捕され、長期の拘置後(今回の男性の場合は23日間拘留)に起訴されて います。

◆公安警察は共産党や国の政策に反対する勢力を狙い撃ちにしているとしか思えません。
◆仮に住居への不法侵入の疑いがあっても身元などが明らかになった後、長期間にわたり拘束(拘留)する必要があるのでしょうか?
◆マンションやビルの〒受けに、商売目的のビラ配布をする人たちも同様に取り締まっているのでしょうか?
◆駅前でビラやティッシュを配るサラ金や飲食店の従業員(?)を道交法違反で取り締まっているのでしょうか?
◆今回の判決は「無罪」ではありましたが、被告の男性の行為は形式的には住居侵入罪を構成するとしています。
 資金や自分の意思の発表方法を持たない者にとってビラ配りは効果的な「表現」の方法です。表現の自由は民主主義の根幹をなします。

 29日付けの各紙の社説から問題点などを見てみます。

◆「政治ビラ配布 知恵絞り表現の自由守ろう」(毎日新聞)
◇東京地裁が「違法な行為とは認められない」として無罪を言い渡した。防 犯やプライバシー保護の観点から、住民が部外者の共有部分への立ち入りに不安や不快感を募らせていることを考慮する一方、御用聞きや訪問販売が認められて きた歴史なども指摘し、ビラ配りを処罰すべきだとの社会通念までは確立していない、と結論付けている。

◇判決は、政治ビラの配布であっても、直ちに表現の自由を保障する憲法21条を根拠に正当化することは困難、とも述べている。集合住宅の住民には共用部分 に立ち入った他人による政治的意見の表明を受忍する義務はなく、ポストに入れられたビラの処分を強制される以上、政治目的でも容認されるとは限らない、と の理由だ。

◇表現の自由は基本的人権の中でも民主主義社会を支える根幹であり、最大限に尊重されね ばならない。ビラは人々に思想や意見を手軽に伝えることができ、住民運動や動員力、資金力に乏しい団体の政治活動にとっては欠かすことができない情報伝達 手段だ。

◇判決は、起訴事実について外形的には住居侵入罪を構成するとした上で、いくつかの理由を掲げて違法性を否定する論法を取っている。表現の自由の重 大性や政治活動としてのビラ配りの重要性について真正面から言及していない点では、物足りなさを禁じ得ない。

◇身元が判明し、立ち入りの目的も違法でないことがはっきりした段階 で、直ちに身柄を釈放すべきは言うまでもない。被告の拘置を請求した検察と請求を認めた裁判所の判断に、問題はなかったか。

◆「ビラ配り無罪 取り締まりに偏りが」(東京新聞)
◇いわゆる「左翼」や「反体制」の活動だけに目を光らせては、警察の取り締まりに偏向があると言われてもやむを得ない。

◇まるで「ビラを配っただけで有罪」という流れができつつあっただけに、今回の無罪判決はそれにクギを刺したといえる。

◇警察当局による一連の取り締まりは、微罪に形を変えた「言論封じ」ではないかという声まで上がっていた。

◇東京地裁が「ビラ配布の目的だけであれば、共用部分への立ち入り行為を刑事上の処罰の対象とするという社会通念は、いまだ確立していない」と判断し
たの は理解できる。

◇プライバシーや防犯への意識は高まっているし、住民が平穏に暮らす権利はもちろんある。

◇無罪になったとはいえ、この男性が二十三日間も身柄拘束されたことは、取り返しがつかない。

◇ビラはお金や組織を持たない人にとって、自分の主張を世間に訴える大切な表現方法である。
 むしろ国民が言論・表現の自由を生かし、多様な主張を述べ合うことが民主主義の根っこを強くするはずだ。

◆「ビラ配り無罪 うなずける判決だ」(朝日新聞)
◇見知らぬ人間が出入りすることに住民が不安を抱く気持ちは分かる。立ち入り禁止を掲示したり、やめるよう言ったりしても効き目がなければ、警察を呼ぶの も手だろう。だが、ビラを配った人がそれで逮捕され、さらに23日間も拘束されるほどのことなのか。

◇ビラを配るためにマンションの共用部分へ入ることが住居侵入罪になるとは、まだ社会通念にはなっていない。今回の場合、住民側は、政治ビラの配布も含め て立ち入り禁止であるとははっきり表示していなかった。

◇自衛隊のイラク派遣に反対するビラを防衛庁官舎で配った市民団体のメンバーが逮捕され、75日間も拘束された事件を思い起こさせる。

◇政治ビラなどの表現の自由にかかわる行為をむやみに罰すると、言論自体が萎縮(いしゅく)しかねない。

◇検察の中には、住居の安全性を重視するのが時代の要請だという考え方があるようだ。しかし、表現の自由は民主主義の基本であり、それを制限することには よほど慎重でなければならない。

◆「ビラ配布無罪*行き過ぎ摘発を憂える」(北海道新聞)
◇憲法が保障する「表現の自由」と、プライバシーに敏感になってきた住民が衝突する事例が増えている。

◇こうしたケースは、そもそも逮捕されて長期拘置され、裁判に持ち込まれるべきものかという疑問は消えない。

◇判決は手続きに重大な違法性はないとし、捜査のあり方には批判の目を向けていない。

◇集合住宅で政治的ビラを配布して逮捕されるケースが相次ぎ、長期の拘置後に起訴されているからだ。

◇住民のプライバシー意識は強まっている。それに対する配慮は確かに必要だろう。しかし、捜査当局の対応は、プライバシーを口実に特定の政治的行動を封じ 込めようとしているかのようにみえる。

◇「表現の自由」の尊重は民主主義の土台である。行き過ぎた摘発がもたらす弊害については、神経質すぎるくらいの注意を払うべきだ。

◆「政党ビラ判決・自由な論議損なうだけだ」(琉球新報)
◇判決は、廊下、階段などの共用部分も「住居」に当たるとした。そして他人の「住居の平穏」を不当に害することは許されないとも述べている。各戸に配られ るビラについて「憲法21条(表現の自由)だけを根拠に直ちに正当化することは困難」と述べる。

◇しかし、政党ビラの配布は憲法で保障された「表現の自由」に含まれる行為。形式的に居住者の意思に反する立ち入りであったとしても、それを刑事裁判にか けることは行き過ぎた刑罰権の行使に見えてしまう。

◇ビラの配布をめぐっては警視庁が04年以降、相次いで市民団体メンバー、社会保険庁職員、厚生労働省課長補佐らを逮捕している。いずれもビラには政治的 主張が含まれ、それらの取り締まり色彩が濃厚というのが気になる。

◇いずれにしろ刑事罰則を背景に政党ビラの配布をやめさせるようなことは、自由な論議を損ない、穏当ではない。
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