06/11/04 映画「そうかもしれない」
週に
1度はサイクリングを。月に3冊は本を。月に1本は映画を。
そんな生活をしたいと思っております。
年々、体力の減退でしょうか、サイクリングに出かけることが億劫になってきています。
読書の方は知力の低下のようで、完読率が少し下がっています。
完読しても、このサイトに紹介するための読み込みなどが出来ずにおります。
そんな中、最近は映画を鑑賞する機会が多くなっています。
体力も知力を使わないですむこと、映画の帰りには場末の居酒屋での一献の楽しみがあることなどが理由でしょう。
さて、今回は「そうかもしれない」
を紹介します。
◆原作者:耕治人(こう・はると)
公式ホームページhttp://soukamoshirenai.jp/に
よりますと、原作者の耕治人さんの略歴は以下のとおりです。
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1906年2月1日、熊本県八代に生まれる。明治学院高等部英文科卒業。
はじめ画家を志し、中川一政に教えをうけるが、詩作に転じ、千家元麿に師事。
のちに小説を発表するようになり、ことに私小説の分野で評価を受ける。作風としては、謙虚なヒューマニズムが作品に通底する。老年の夫婦愛の極地を描い
た傑作といわれる「天井から降る哀しい音」「どんなご縁で」「そうかもしれない」の命終三部作の、終作「そうかもしれない」が掲載された「群像」2月号の
発売日前日、1988年1月6日、口腔底ガンにて他界。
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[原作:耕治人]とあり、命終三部作から脚色されているようです。
◆身につまされるストーリー
小説家(桂春團治)とその妻(雪村いずみ)は二人だけの質素ではあるが平穏な生活を過ごしています。そんな中、妻が痴呆症を発症し夫は自宅での介護を続
けていき
ます。
病状の進行、自宅介護の限界、自分自身もガンを発症してしまいます。
どこにでもある老夫婦の生活です。
二人が元気でいる間はよいのですが、どちらかが病を得てしまうと、その生活は一気に経済的にも、精神的にも、肉体的にも追い込まれ破綻していきます。避
けられない現実です。
どう生きて、どう死んでいけば良いのでしょう。
自分自身がボケていく怖さもあります。
何もかもが分からなくなるボケならまだしも、この映画では正しく認識できている部分とそうでない部分が斑に現れていました。
自分のボケがわかるボケは辛いことでしょう。
◆犠牲は女性
老いの問題は辛いことですが、ボケ始めた妻が夫に向かって「息を詰めて、あなたの仕事の邪魔をしないように生きてきました」と一気にいう台詞は堪えまし
た。
そして「あなたは、何もかも自分ひとりで決めて・・・」と続きます。
男ってどうしようもないですね。
また、夫は妻の甥から叔母が発病したのは「あなたが叔母さんを食いつぶしてきたのだ」と言われます。
この夫は妻に対してよい夫であったと思うのですが、それでも男は独善的なのでしょうね。
◆医者
私が医者に行きたくない理由に、医者の言うことなどいつも同じという思いがあります。
胃が痛むと医者に行けば、「酒を慎め、たばこを吸うな、暴飲暴食を止めろ、規則正しい生活を、、、、」と医者に行かなくても分かるようなことばかり言わ
れていました。
そして、帰りには「はい、お大事に」。
病状が進みつつあった妻が医者から「はい、お大事に」と言われて、ぼんやりとした表情で何度も復唱するシーンが気になりました。
◆朝の音
鳥のさえずり、新聞配達人の自転車の音、出勤する快活なハイヒールの靴音、、
ベッドの中の二人の朝に、聞こえてくる音です。
静かに、穏やかな日常を描いていて良かったです。
◆エニシダとコスモス
黄色いエニシダと、コスモスの花が物語りのキーワードになっています。
妻は、エニシダ(http://www.kakinotane.jp/page_2/a/a06.html)の小さくて可憐な
花
が好きです。
夫婦は、コスモスの花に故郷・八代を偲びます。
◆住まい
高山夫妻の住まいは、武蔵野?の名残の残る住宅地、質素な平屋建てに少し広めの庭付きです。
狭い台所、居間、書斎、寝室とこじんまりした部屋や、質素な家具などに生活が感じられました。
◆烏丸せつこさん
久し振りの烏丸せつこさんでした。
この映画のテーマとは逆に、齢を重ねることも良いものですね。
烏丸せつこさんも、そろそろ五十路かと思われますが、色気がありました。
◆散髪
冒頭のシーンです。
夫は濡れ縁に座りケープを掛けてもらい髪を切ってもらっています。
ケープの流れる風下に、夫婦二人の湯のみが置かれています。
妻は、お茶を出したことを忘れてまたお茶の用意をするという、妻の病的な行動を最初に描いている部分です。
なぜ、散髪をする場所(特に風下)に、湯飲みを置いてあるのでしょうか?
予告編にもでてくる重要なシーンだけに気になりました。
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