07/12/02 田
辺聖子「川柳でんでん太鼓」C
見る番組皆無(かいむ)安心し
て読書(佐伯みどり)
すっきりとした良い句ですね。
今日の私の心境です。
ぼんやりとゴロゴロと過ごしたいと思っていた一日でした。テレビのスイッチを入れても画面には、何が可笑しいのかヘラヘラと笑ったバカ芸人の顔ばかりで
す。
おかげさまで、ゆっくり眠れたことと、本を読めたことは、馬鹿テレビに感謝です。
飽きずに今回も田辺聖子さんの「川柳でんでん太鼓」の紹介
します。
◆うつむいて女作戦練り直す(中川よし子)
田辺聖子さんは、女性の句を多く取り上げられています。
女の優しさや、しおらしさよりも、女性が本質的に持つ強かさをうたった川柳が、ダメ男にも気持ちよく入ってきます。
◇田辺聖子評:「女は恋すればみな策士である。どんな作戦をあわただしく練り直すのやら、このへんで泣いたろかしらん、それとも怒ったろかしらんと思いめ
ぐらしているのかもしれぬ。」
気をつけましょう。下向いている女性をしおらしいと思ってはダメなんですね。「このへんで、泣いたろうか」なんて思っているのですね。
◆もうこわいものなし傘は返します(園田恵美子)
読んですぐに分かりませんでしたが、田辺聖子さんの評を読んで、またまた女性の強さと怖さを実感しました。
男への愛がさめた時の女性の怖さは皆さんご存知のとおりです。
◇田辺聖子評:「女は男に気に入られたい、男に良く思われたい、と思えばこそ、怖いのである。何をするんもおっかなびっくり、おどおどと自信がな
いのである。しかし男への愛がさめたとき、女は強くなる。そうなると男になんと思われようとかまうもんか、という気になる。怖いもんなしである。クラッと
かわると女は強い。−そうそう、傘も借りてたっけ、あれも返してあとは関係なし、という女のこわさの一面を、じつにうまくつかんでいる句。」
◆コーヒーをごくりごくりと飲むべからず(杉田絵巳子)
無粋な男(勿論女性も)は嫌ですね。
ビールを舐めるように飲む男も嫌ですが。
決して、粋に生きているわけではありませんが、人の無粋は気になるものです。
◇田辺聖子評「無神経は男は、コーヒーを番茶みたいに飲み干すのである。せっかく女とさし向かいになっているとき、かぐわしい匂いをかいで、ゆっくり味
わってすすりればいいものを、ごくりごくりとは。ゆっくりしたい女心。ちょっとでも長く彼の前に坐っていたいとひそかに願う女心を知らぬ、心なしの男のふ
るまい。」
◆価値観が変わり贅沢でない玉子(岡崎麻子)
卵の価格は、30年前と変わっていないそうです。
戦後生れの私は、一つの卵で作った卵ご飯を三人の兄弟で分けて食べた思い出があります。
他にも、寝込むと買ってもらったバナナ、到来物のみかん缶詰のシロップを取り合ったことなど、「価値観」が変わった食べ物です。
◇田辺聖子評:「この句、『価値観』などと物々しいコトバを拉(らつ)してきて卵にくっつける、その取り合わせよろしきを得ておかしい出来となった。」
◆かしこい事をすぐに言いたくなる阿呆(亀山恭太)
井上ひさしさんは「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く」と言われていましたが、人はみな易しいことを難しく言うことで、自分を賢
くみせたくなる
「阿呆」ばかりです。
◇田辺聖子評:「実際、この句、私のことを言われている感じがして、まりました。言いたくなるんですよね、阿呆はムツカシイことを。私なんかの場合だと、
書きたくなるんですよ。ムツカシイ漢字や学問を、右から左に書き写して人を驚かせたくなる。この句、紙に書いて目の前に貼っておかねばならない。」
パソコンを使って文章を書くと、どうしても漢字を多用してしまいます。自戒せねばなりません。
◆ペン持てば内向性の人でなし(薮内千代子)
一読では、「文章を書く男は、内向性で人でなし」かと思いました。
ペンを持てば、内向性の人でなく、過激な人となるとのことだそうです。周りに文章を書く人を持たないので、良く分かりませんが、私がその傾向かもしれま
せん。
◇田辺聖子評:「面と向かえばおとなしい人は、文を書かせると過激になる傾向がある。私も思い当たる人がいる。}
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