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08/12/29 映画「いのちの作法」
 映画「いのちの作法 -沢内『生命の行政』を継ぐものたち-」を紹介 します。

 昭和30年代、豪雪、貧困、多病多死という三重苦に苦しめられていた村が、「いのちの格差」をなくす「生命の行政」によって悪循環を断ち切り、今もそれ を守り発展させている人たちの記録映画です。

 
岩手県西部、秋田県に隣接する山 間の沢内村(現 西和賀町)は、1957(昭和32)年村長に就任した深沢晟雄さんが「住民の生命を守るために、私は自分の生命をかけよう」と、住民や職員と議論を繰り返 しながら冬季の交通の確保、医師や保健婦の確保し、乳児老人医療費の無料化を実施し、日本で始めて乳児死亡率ゼロを達成します。

 1956(昭和31)年の沢内村の乳幼児死亡率は69.6(出生1000人に対し約70人が1歳になるまでに死亡)でした。ちなみに現在(06年)の日 本の乳児死亡率は2.86です。
 1963(昭和38)年、大学病院から沢内病院に請われた 増田進医師は松沢村長から「医者は 月給が高い、でも村には必要だから払う」と言われ、村に必要な医者にならねばと思われたそうです。

 昔々、こんなに偉い村長がいて、村はこんなに立派になりましたというような懐古趣味の映画ではなく、今を生きている村の人たちが誇りを持って「生命の行 政」を実践している「今」を描いた映画でした。
 子ども、老人、障害者いわゆる社会の弱者が大事にされている町、政治の原点のような町でした。
 町の人がみんな生き生きとしたいろいろな人が登場します。

▽温泉旅館の女将は障害を持つ娘の将来を考え旅館を廃業しグ ループハウスとして運営しています。
▽90歳になる元棟梁は、娘が通うワークステーション(共同作業所)を訪れ娘の働きを見ます。
▽このワークステーションの施設長は、東京で英語教師をしていた女性です。
▽障害を持つ子どもの親は「
障害の 重さはいのちの重さに比例する」と語ります。
▽特別養護老人ホームは町外れにあるのではなく町の中心にあるそうです。
 このホームの元施設長が入所者も町に出るべきだと考案した「雪見ぞり」を復活させる人たち。
 盆踊りの太鼓のリズムに合わせて目を不自由な手でリズムを刻みます。

 社会の格差は、富と貧困、中央と地方、強者と弱者とどんどんと広がっています。
 その格差は、人間としての「尊厳の格差」「命の格差」なのです。

 未読ですが、深沢村長について書かれた及川和男さんの「村 長ありき」を下敷きにされているそうです。
 
井上ひさしさんの小説「吉 里吉里人」を思い出しました。
 東北のある地域の住民が吉里吉里国として独立するという長編です。

 よい映画でした。是非ご覧ください。自主上映もできるそうです。

◆女性監督とドキュメンタリー映画
 この映画を大阪・十三の第七藝術劇場で観たのですが、三つのドキュメンタリーの予告編が上映されていました。
 「シロタ家の20世紀」(藤原智子監督)、「
心理学者 原口鶴子の青春」(泉悦子監督)、「ブラジルから来たおじいちゃん」(栗原 名奈子)
 女性の緻密さ、辛抱強さが記録映画、ドキュメンタリー映画には向いているのでしょうか?
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