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09/09/01 朝日俳壇、歌壇より

 8 月30日付けの朝日新聞の朝日俳壇、朝日歌壇より気になった句や歌を紹介します。

◆朝日俳壇
◇その頃は我は一歳原爆忌(日進市・稲田浩治:長谷川櫂選)
 一歳で被爆された方でしょうか、64年前に一歳だった方でしょうか?
 自分の年齢から、その時間の長さと消えることのない苦しみに思いを重ねておられるのでしょうか。

◇五歳にて一人引き揚げ終戦忌(姫路市・山崎ゆみ子:長谷川櫂選)
 こちらは五歳の女の子が一人引き揚げてきたとのこと。遠縁の小母は五歳の娘を連れて、1948年になって命からがら引き揚げてきたと聞いています。
 まして、いたいけない五歳の女の子の旅、食べるものも満足にはなかったでしょうに。

◇長崎忌おなじ忌日の墓ならび(西海市・原田覚:大串章選)
 同じ忌日の墓が並ぶのは不幸なこと。東京でも、名古屋でも、大阪でも、沖縄でも、ヒロシマ、ナガサキでも多くの人が殺されました。決して忘れてはなりま せん。

◇猛暑にも負けぬ厚顔ここに在り(神戸市・三宮野乃:金子兜太選)
 句の意味がわかり難いです。でも気になります。
 「厚顔」は誰をさすのでしょうか?選挙での候補者の顔と読みました。暑さにも負けず候補者は厚顔にも「ウソ」を捲くし立てる。

◇熊埜御堂
 「くまのみどう」と読むそうですが、大分県宇佐市の
熊埜御堂義昭さんが次の句で入選されていました。
 青春の汗よ匂ひよ合宿す(長谷川櫂選)
 忘れられることのない名前ですね。得をされているのでしょうか?損をされているのでしょうか?

◆朝日歌壇
◇やさしくて甘ったるくてかわいくてそんな大原麗子が死んだ(高崎市・須藤章:佐佐木幸綱選)
 大原麗子の死を悼む句や歌が先週も入選していました。ひとりで生きる、ひとりで老いる、ひとりで死んでゆくことは生き方の問題、しかし、その死が何週間 も知られないことが哀しいこと、社会の問題だと思います。
 交友も広く、経済的に自立していたあろう人でさえ死後何日も知られずにいたそうですから、われわれ庶民はどうなることやら。。

 俳壇にも下記の句が入選していました。
 夏蝶の死に女優の死重ねたり(武蔵野市・相坂康:大串章選)
 哀しくなりますね。

◇睡眠も化粧も食事もパソコンも部屋を飛び出た午後の地下鉄(福島市・澤正宏:高野公彦選)
 うまい歌だなあと思い読みました。
 私と公、内と外の区別がつかない人が増えています。男女、老若を問いません。
 「部屋を飛び出た」とは言いえて妙、そのうち車内でセックスでもやりかねない時代が来るかも知れません。

◇ボランティアと英訳されし志願兵特攻隊の碑文哀しき(横浜市・本田輝:高野公彦選)
 志願兵はボランティアと訳されるのですね。
 「志願」しなければならないような風潮が怖い、強制されるより怖いことだと思います。
 言論もしかり、注意していないとある日「翼賛体制」が出来上がっているかも。

◇リンカーンはアメリカンコーヒー三杯と唱えつつ書く今日の鬱の字(新座市・中村偕子:高野公彦選)
 選者は「鬱という字は覚えにくいが、分解すれば『林、缶、ワ、米、コ、ヒ、三』である。と教えてくれる楽しい歌。」と評しています。
 自分が鬱気味なくせに「鬱」という字は書けません。”リンカーンはアメリカンコーヒー三杯”と練習してみましょう。

◇夏座ぶとん裏返すなどし僧を待つ一人の家のひとりの法事(広島市・和田紀元:永田和宏選)
 「紀元」さんは多分、1940(昭和15)年生まれの方ではないかと思います。
 神武天皇が即位した日(紀元前660年2月11日)をもとにした年の数え方では、1940年が神武紀元2600年にあたるということで戦前の日本では大 騒ぎだったそうです。
 その年に生まれた子の名前は「紀元」「紀子」など多かったそうです。私の職場にも一人「ノリモト」さんがおられました。

 七十歳近い男性がひとりで営まれる法事、坊さんの来られるのを待ちわびて座布団を裏返す所在のなさでしょうか。

◇楽しげに食べたるならん芋畑に猪の足跡乱れておりぬ(西予市・大和田澄男:馬場あき子選)
 芋畑を荒らされている農夫は、その足跡が複数なこと、乱れていないことから「楽しげに食べたるならん」と優しい目で詠んでいます。
 動物と共に生きている優しさと強さですね。

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