09/11/24
朝日俳壇、歌壇より
杉並区高円寺の居
酒屋火災は痛ましいことです。
連休初日の朝、建物の2階にある居酒屋から出火し4人が死亡、12人が重軽傷を負った事故です。この店は17時から翌日の10時まで営業していて、同じ
ように飲食店で働く人らが自店の仕事を終え集っていて事故にあったそうです。
先日の釜山の射撃場の事故など不特定多数の人が集まる建物での事故が繰り返されます。私も居酒屋やバーなどに行きますが安全設備のチェックしたことはあ
りません。火事や地震などが発生すれば同じように逃げ惑い死に至ることでしょう。
この店も非常口を塞ぐように座布団が積まれていたそうです。こんなことはこの店だけの例外だとは思えません。消防当局には建物の消防点検を厳密にしてほ
しいものです。
一日遅れで朝日新聞の俳壇、歌壇より気になった句や歌を紹介します。
◆朝日俳壇
◇今日までの日和に急ぐ冬支度(東京都・石田靖子:長谷川櫂選)
小さくてもいいから土地、地面のある生活はいいものですね。コンクリートの壁に囲まれた生活では季節感も今ひとつです。
羨ましい句でした。当方は<冬支度することもなしわが暮らし>ですね。
◇六人に一人貧困頬被り(静岡市・伊藤和義:長谷川櫂選)
一読して「頬被り」の意を考えました。6人に1人も「貧しい」と言われる人がいるのに政治は「頬振り」を決め込んでいると解しました。
日本の相対的貧困率は15.7%(2007年)でおよそ6人に一人が貧困だそうです。OECD加盟国の中ではメキシコ、トルコ、アメリカについでワース
ト4位だそうです。相対的貧困率の低下は格差の拡大でもあります。
◇手袋をはめて力をつけにけり(横須賀市・佐藤博一:大串章選)
身支度をキチンとすると気も引き締まり力が沸く気がします。
私の祖母は若くして寡婦となり少ない田んぼを耕していました。そんな祖母は百姓仕事に慣れない嫁である母に「身なりきちんとするように」と口癖のように
言っていました。
◇小春日や旅の切符の一揃い(東京都・小島知子:大串章
選)
旅支度は心躍るものです。それが小さなものでも遠くへの旅であっても。
未だ見ぬものへの想い、思い出への想いが旅支度の楽しみです。12月になれば「青春18切符」の旅に出かけましょう。
◇正論を聞かされてゐる寒さかな(茅ヶ崎市・古田哲弥:稲畑汀子選)
テレビで報道される政府の事業仕分けの場面を思いました。概算要求予算を削るのは個々には「正論」でしょうが何故か人の温かさを感じませんでした。
◇木枯も二号になれば許されじ(秦野市市・熊坂淑:金子兜太選)
兜太先生は「大人の諧謔。木枯らしも人も一号がよろしい」と評されていました。
◇山影の来てゐる岩の赤蜻蛉(いわき市・馬目空:金子兜太選)
大きな岩の上に山の影がさしてくる絵は雄大です。
◆朝日歌壇
◇晩秋の朝の茶房の湯の音を最初の客として聞いてゐる(京都市・才野洋:佐佐木幸綱、高野公彦選)
朝早く喫茶店に出かけお茶を飲み習慣は今ではなくなりましたが、ポットに沸くお湯の音を聞きながらゆったりした気分でいられる幸せ。
◇テレビには「キモイ」と言わるる人映り笑われながら笑いおりぬ(東京都・白石瑞紀:佐佐木幸綱選)
テレビのバラエティ番組とは「馬鹿なテレビ(スポンサー)局の馬鹿な芸人による馬鹿な視聴者のための番組ではないでしょうか?「キモイ」と蔑まれてもそ
れが「芸」だと錯覚しているのでしょうか?演じる奴も使う奴もそれを見て笑っている奴も情けないとは思わないのでしょうか?
◇豚肉(ポーク)食べ「ヘキサゴン」見て大笑いアイス食べつつ母逝きにけり(横浜市・西村美智子)
これは入選歌ではありません。
高野公彦さん選で一席に入選していたのは<花に埋まる母のくちびる紅あざやか百一歳天へのかどで>ですが、私には先の歌の方が気に入りました。
好きなものを食べ、好きなお笑い番組を見てコロリと逝ければこれ以上はないです。
◇宇野千代は作品とせしわたくしはひたすら秘して今傘寿恋(東京都・遠藤やうこ:高野公彦選)
八十を超えて恋をしておられるとは立派なことです。
選者は「宇野千代は恋を小説にしたが、この作者は秘めて傘寿の今も恋しているという」と評されています。
◇さっきまで紙を次々繰り出した箱が途端に洞窟となる(郡山市・畠山理恵子:高野公彦選)
「次々と紙を繰り出す箱」とは何でしょう?気になりました。
銀行などの窓口の番号札を出す機械でしょうか、コンピュータのプリンタでしょうか、ATMのことでしょうか?
◇君のいる付近を指でたどってる東北線は時刻表の上(郡山市・畠山理恵子:永田和宏選)
同じ畠山理恵子さんの歌でした。旅でた君は今頃の時刻にはこの辺であろうかと指で辿っている。私は時刻表の本文の数字の並んだページをなぞっていると思
いましたが、選者は「時刻表の地図を辿りながら、想いは君と共に旅にある」と時刻表の地図のページをなぞっていると評されていました。
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