Google
WWW を検索 残日録内 を検索
←Back  Haiku  Home Mail Archives Twitter Next→

10/01/11 朝日俳壇、歌壇より

 私は死刑制度に反 対です。一番大きな反対の理由は冤罪や誤審の可能性がゼロではないからです。死刑を執行してから冤罪でした誤審でしたでは取り返しがつきません。

 新たに死刑が確定した事件がありました。1月4日、08年3月に起きた2人を殺し7人に重軽傷を負わせた土浦連続殺傷事件の被告の死刑が確定しました。 被告は逮捕直後から「7、8人殺せば死刑になれると思った。自殺は痛いからいやだった」と供述していたと言われ、水戸地裁の判決理由にも「自らの死刑願望 を達成するため他人の生命を奪った動機は身勝手極まりない」と書かれています。

 ここ数年、明確な理由のない無差別な殺人事件が起こっています。それらの被告の多くは自ら死刑を望んでいます。
 死刑制度を支持する大きな理由の一つに犯罪の抑止するためというのがありますが、自ら死刑を望む人たちのとって死刑は抑止力になり得ないという皮肉な結 果です。

 被害者の遺族は
「できるだけ刑の執行を遅らせ、彼に少しでも考える時間を与えてほしい」と語っているそうです。そうで しょうね。このまま本人の望むように死なせては遺族はたまったものではないでしょう。土浦事件の金川被告、死刑確定 心境語る被害者遺族」(朝日新聞 10/01/05)

  今週の朝日新聞の俳壇、歌壇より気になった句や歌を紹介します。

◆朝日俳壇
◇福笑いとつても長い鼻の下(長岡市・内山秀隆:金子兜太選)
 いまどき、福笑いをするお家があるのでしょうか?句は実際に「福笑い」をしたということではないように読みました。選者も「『長い鼻の下』つまり鼻下 長。女色に迷いやすい男の福笑いとは更に目出たいのだが、どこかいかがわしい気分も」と評されています。楽しい句ですね。

◇難聴に笑むほかはなし山眠る(山形県・小山田恒吉:金子兜太選)
 話しかけられ意味がよくわからず曖昧な返事は微笑むしかない、こんなことはよくあるものです。年をとると聴力も減退し句のようなことになっています。コ ミュニケーションとは難しいものです。
 季語がしっくりと落ち着いて素敵な句ですね。

◇肩書の耳障りなりおでん酒(神奈川県・中島さやか:大串章選)
 今週一番気に入った句でした。居酒屋でヒンシュクなのはこうゆう輩です。
 現役のサラリーマンが部下に奢るつもりで来ているのならいくらかは許せるでしょうが、リタイヤした人たちの中で昔の肩書をひけらかす輩は耳障り以上のも のです。
 中年男性の句と読みましたが、「中島さやか」さんは若い女性のような名前でちょっとびっくりでした。

◇鶴岡は雪の降る町雪振れり(小金井市・浮海早苗:大串章選)
 リズムのよいですね。鶴岡には筍(孟宗汁)の季節に訪れたことがあります。鶴岡は藤沢周平さんの作品の海坂(うなさか)藩のモデルの町です。五間川(内 川)に雪の降る景色が藤沢作品にもあったような。
 この句を読んでまた鶴岡に行きたくなりました。

◆朝日歌壇
◇社員三人鬱病となしし社に勤め十六年をくたびれ果てぬ(仙台市・坂本捷子:馬場あき子選)
 「鬱病となしし社」とは社員が鬱病になった原因が社にあると読むのでしょうか?
 心の病気はなかなか理解されません。特に企業の中にあっては。私の部下にも心を病んだ人がいましたが会社の産業医ですら「怠け病」に近い偏見をもってい ました。
 そんな会社で16年、さぞかしくたびられたこととお察しいたします。

◇自死防ぐ討論会は何一つ結論は出ず静かに終わる(塩尻市・百瀬享:馬場あき子選)
 最近、「自殺防止××」が流行っているような風潮ですね。そんな催しで自殺が防止できると本気で思っているのでしょうか?先の歌の心の病も自殺も病巣は 一つのような気がします。この歌の「討論会」も欠伸のでるような催しだったのでしょうか?

◇真っすぐに来た人生ではなかったと庭に来し鵯鋭く鳴きぬ(佐世保市・近藤福代:馬場あき子選)
 真っすぐに生きた人などいるのかと、真っすぐに生きて来なかった私は思います。鵯さえ真っすぐ生きられなかったと鳴いています。

◇出でゆきし人らはいかになりぬらむわが居るビルも空室めだつ(横浜市・池松勝紀:佐佐木幸綱選)
 「いかになりぬらむ」とは「どうしているのでしょうか」という意味でしょうか?短歌は難しい表現をするものですね。
 空室の多くなったビルやアパートは寂しいものです。世の中の好不況に関わらずある光景なのでしょうがやはり寂しい。

◇開けたなら閉めてゆけよわが猫よこごと言いつつ年暮れ果つる(豊中市・玉城和子:佐佐木幸綱選)
 ぼんやりと読めば夫にでも「開けたら閉める」と注意しているように読みました。相手が猫ならそんな小言も愛嬌のうちです。平穏な年越しです。

◆第26回朝日歌壇賞
◇永田和宏選
 「煙草吸うヤツしか乗せない」はずだった車に置かれたチャイルドシート(和泉市・星田美紀)

◇馬場あき子選
 うずくまる野手をなだむる野手がいて勝者は既に整列を終う(いわき市・鈴木一功)

◇佐佐木幸綱選
 白鳥が水浴びるごと噴水は降りしきる雨を受けてはばたく(沼津市・森田小夜子)

◇高野公彦選
 子ら起きる前のひとときひっそりと『1Q84』年に旅する(調布市・西野千晴)

inserted by FC2 system