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10/02/18 松本清張「疑惑」

 菅直人財務相が 「消費税率引き上げを含む税制抜本改革に着手する」の考えを示したそうです。(「消費税:『景気が後退』『必要なら』…閣内に温度差」毎日新聞 10/02/17)
 民主党が「コンクリートから人へ」とか「国民のいのちを守る」とか言っていますが、民主党政権が誰の方を向いているか、誰のための政治を行おうとしてい るのか、その本質を垣間見ることができました。
 消費税は所得が低い層に負担の高い逆進性の高い税制です。

 消費税増税を言う人たちは「税収が落ち込んでいるから消費税も増税を検討すべき」といいます。税収が落ち込んでいるには訳があるからのことです。

 GDP(国内総生産)は1985年の1.5倍の約475兆円(2010年見込み)に、法人税収は12兆円(1985年)から6兆円(2010年度見込 み)に落ち込んでいるそうです。
(「消費税論議、根本的に間違い」しんぶん赤旗 10/02/16)

 自公政権が大企業への減税政策を行ってきた結果です。
 献金をする大企業には大きな減税、献金できない物言わぬ庶民には増税という政策が政権が変わっても継続しています。

 マスコミも消費税増税論議に賛成しています。
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 消費税論議を封印したままでは、年金制度の抜本改革を含 め、社会保障の将来像を描く作業も進まない。鳩山政権は内需主導による景気回復を目指しているが、社会保障への不安を国民が抱えたままでは、消費の拡大に も結びつかないだろう。
---------------財務相発言―消費税封印の呪縛を解け」(朝日新聞 10/02/17社説)

 朝日新聞はどこを向いているのだろか。社会保障の財源がないなら税負担は公平にすべきではないでしょうか?消費税が公平な税だと思っているのでしょう か?
 先の「しんぶん赤旗」は、消費税導入からこれまでの累計税収は約224兆円、法人3税の減収額の累計は約208兆円だと指摘し「法人3税の落ち込みの穴 埋めのために消費税が使われたのは明々白々だ」と述べています。

 弱者苛めの消費税は一刻も早く廃止を!


  佐野洋さんの短編集「胸の遊び」を紹介 するつもりでしたが、後で読んだ 松本清張さんの「疑惑」を紹介します。と書きかけてネットで調べて見ると映像化されていました。
 ひとつは1982年に松本清張脚本、野村芳太郎監督で
映画化されていました。映画では主人公の弁護士が女性弁護士となっ ていました。
 もうひとつは、松本清張生誕百年の昨年にテレビ朝日でドラマ化(竹山洋脚 本)されていました。ストーリーを読むと原作から大胆な脚色がされていました。ストーリー展開に大きな要素だと思っていた容疑者の名前が変えられていまし た。

 さて原作は。
 前科四犯でいわく付きの鬼塚球磨子(おにづか・くまこ)という銀座のホステスが北陸の資産家の男性と結婚します。男性とのドライブ中に車ごと港に転落し 男性は死亡しますが球磨子は助かります。男性には多額の保険金が掛けられており保険金詐取目的の事故を装った殺人容疑で
逮 捕されます。唯一の物的証拠と目されていた車内に残されたスパナは球磨子が脱出するためにフロントガラスを割るためのもの されていましたが、実験の結果、水中に墜落しただけでフロントガラスが割れることが証明され、物的証拠がなく状況証拠しかない事件でした。

 地元紙の記者・秋谷は警察情報をそのままに垂れ流すだけ でなく、球磨子の生い立ちを暴き「北陸一の毒婦」「女狐」「稀代の犯罪プロフェッショナル」「女鬼熊」などと言葉の限りに犯罪者に仕立て上げます。

 球磨子に最初についた原山弁護士は自分の体調から一人での弁護は無理だと大学の後輩で刑事裁判で著名な東京の岡村弁護士に共同弁護人を依頼しますが断ら れます。結局原山弁護士は体調を崩し弁護人を辞任します。
 後任に国選弁護人として民事事件が専門の佐原弁護士が選ばれました。

 秋谷記者は裁判の行方が気になってしょうがありません。球磨子の犯罪歴には詐欺にかかった訴えた人に恐喝(お礼参り)をしていたことがあり、無罪になっ て釈放され新聞記事を読んだ球磨子がお礼参りをしかねないと考えていたからです。
 共同弁護人の依頼が断られ、国選の弁護人が民事専門だということで有罪を確信し安堵をしたのも束の間、国選弁護人の佐原の弁護活動は検察側証人の証言の 矛盾を鋭く衝いていくと秋谷の不安は増してきます。やがて佐原が球磨子の無罪の確証を掴むことになり秋谷の不安は恐怖へと変わっていきます。

 事件はどこかで見聞きしたような保険金詐取目的の殺人事件が題材になっています。
 マスコミの報道も昔と変わっていないように思います。マスコミに「推定無罪」という言葉はないのでしょうか?
 マスコミの事件報道は「ペンを持ったおまわりさん」以上に悪質です。「ペンを持った裁判官」でもあります。いろいろと考えるさせられた本でした。

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