10/11/14 時実新子「想夫恋」
沖縄県知事選挙が
闘われています。アメリカ軍の普天間基地の「県外移設」に知事の椅子にしがみつくために「変節」した現職を民主党政府は陰に陽に支援しているようです。北
沢防衛相は「現職に勝って欲しい」と発言。
一貫して県外移設を明らかにしている伊波(イハ)陽一さんが当選すれば日米関係が悪化するなどとマスコミも反イハの論調で一致している。98年の知事選
では官房機密費が使われた、今度の選挙でも官房機密費が使われているかもしれない。
オバマ・アメリカ大統領は横浜で開催のAPECに出席するために来日しているようだが、広島で行われたノーベル平和賞受賞者世界サミットには出席しな
かった。オバマはどうしてもヒロシマに行きたくないようだ。行けない事情があるのだろうか。彼のプラハ演説は単なるパフォーマンスだったのか。
時実新子さん編著の「想夫恋」を紹介します。
もともと週刊文春に連載されたいた川柳の投稿ページ「とうでん川柳倶楽部」に掲載された入選句の中から選者の時実新子さんが選ばれた優秀句がまとめられ
ています。時実さんの句も序章、終章に載っていて楽しめる本でした。
この投稿の企画を始めるのあたって時実さんは応募者にサラリーマン川柳のように「ふざけた」雅号を使わないことを求められたそうです。「(ふざけた雅号
は)古川柳や狂句時代の尻尾に外ならない、逆行はなはだしい姿勢である」と言い切っておられます。
確かに生命保険会社が主催する「サラリーマン川柳」の入選句には、さらば地球、甘下り、川柳駄作、別人28号など「ふ
ざけた」というか奇をてらった雅号が目立ちますが、次の句のように雅号が俳句の「前書き」「詞書」のような役割を果たしている場合もあります。応募規定で
は「作品の解説となるような雅号はご遠慮ください」と書かれていますが。
<「離さない!」十年経つと話さない(倦怠夫婦)>
また、新子さんは川柳は韻文だからリズムが大切、上五が七音になっても、下五が六音になってもリズムは狂わないが、中七が六音とか八音になるとリズムが
おかしくなると、中七の七音を守ることの大切さを書かれていました。参考になりました。
さて、掲載句を紹介します。
◆待っていると椿は落ちずくもり空(時実新子)
椿は咲くもの、椿は落ちるもの。静かな中にドサッと音を残して椿の花は落ちます。
しかし、待っていると落ちないもののようです。「くもり空」がいいですね。
◆残業を嫌う女に猫の影(東京都荒川区・諏訪克己)
毎日「猫に餌をやらなくては」と定時退社を励行する女性はこの句の対象ではないのでしょう。
なんとなく近頃残業を嫌うようになったぞ、というような女性のことを詠んでいるように思います。俗には「男ができたのか」などと下種な親父どもは思うの
であります。
◆泣くたびに甲羅が少し厚くなる(名古屋市・高橋以知子)
新子さんも「涙は女の武器である」と言われているように、私もその武器でたくさんの攻撃(反撃)にあったことは遠い昔のこと。
「自分で語る自分の嘘に女はさめざめと泣けるものなのである」とも。
吐いた嘘の上に嘘を重ねる男の言い訳の嘘も同じようなものだと思いますが。。。
◆ひとりで居れば嘘などつくこともなし(名古屋市・春田奈世美)
無人島に一人でいれば嘘など吐く必要も吐かれることもありません。でも一人では寂しい。
◆もう二度と恋はしないか花嫁よ(青梅市・倉富洋子)
凄い皮肉です。恋は一生するもの、花嫁だけが禁欲ではない。
◆恋敵(ライバル)が気に入らなくて恋さめる(所沢市・三宅悠子)
女性には、ライバルの女性を見て「こんな女と取り合うなんて馬鹿らしい」と思うことがあるらしい。
相手の男がくだらない女と自分を天秤に掛けているなら、その男の馬鹿さが見えてということでしょうか。
◆奥さんと呼ばれて嘘の道教え(東京都世田谷区・石川晴美)
選評によると未婚か既婚かはわかりませんが、作者は27歳で学生の方のようです。
27歳の女性は「お嬢さん」と呼ぶには抵抗があり、かといって「奥さん」もなじまない年齢かもしれません。
この句は「奥さん」と呼ばれて心中穏やかでない女性がそ知らぬ顔で間違った道を教えたとのこと。まあ、年齢も正体も不明な女性に道など聞かないことが一
番かも知れません。
◆臆病でまだ結婚しています(川西市・糸賀千代)
私も同様です。こんな方、女性にも男性にもたくさんおられるように思います。
離婚するには結婚するときの数倍のエネルギーを必要とすると言われているように、離婚したいと思っていてもそうそう簡単に離婚できません。臆病でも良い
のではないでしょうか。
◆時には娼婦女の胸は風車(春日市・佐竹三紀枝)
時には娼婦になりたいとは「良妻賢母の変身願望」だと新子さん、男はそれに気がつかないとも。
良妻賢母な女性でなくとも娼婦のように淫らになってみたいという願望はすべての女性にあるのではないかと「東電OL殺人事件」を思い出しました。
◆今なら美しい喪主になれる(広島市・松浦貞子)
女性の心の奥は夫である男性にも読み切れません。「今だったらまだ美しい。美しいうちに喪主に」などと川柳の中とは言え詠めるとは女は恐ろしいもので
す。
◆桜桃忌少し情死に憧れる
(調布市・黒田千鶴)
太宰治が愛人と心中し遺体が発見された日(6月19日)を太宰を偲ぶ日を桜桃忌と呼ぶのだそうです。
そんな日に好きな男と一緒に死んでもよい、死にたいと思うこと、男にはな
い感覚でしょうか。
◆返事だけしている電話可笑しいぞ(貝塚市・中野恵空)
架かってきた電話に「はい、はい」「あ、そう」「いえ」とか言っているのは、相手が異性からか、借金取りか何れにしても周りに悟られたくない相手でしょ
う。
◆どう見ても夫婦ではない身のこなし(岡山県吉井町・延原令岱)
「訳あり」の二人でしょうか。一緒に歩いている二人を見ても連れなのかど
うかが何となくわかるものです。
昔にこんなことがありました。観光地で二
人で食事をして勘定を払う時に店のおばちゃんから「あんたら夫婦と違うやろ」と言われてびっくりしたことがあります。
◆それぞれの秘密はこんで集配手(水街道市・岡本恵)
いまなら架空に張り巡らされた電線や空中を飛び交う電波がみんなの秘密を
運んでいることでしょう。
◆老妻と過去ある人の喪のハガキ(松山市・松澤喜一郎)
妻の過去の男の訃報、こんなとき男はどんな顔をすべきなんでしょう?
新子さんは「ま、弔い酒とも祝い酒ともつかぬ熱燗をどうぞ」と。
◆五十すぎときどき家出考える(姫路市・河野基樹)
三十代に家出をした私でも、また旅に出たいと思うものです。
いろいろのしがらみを捨て「家を出る」ことも必要な気がします。勇気を持って旅にでよう。
◆体力の衰え憎しみ薄くなる(高槻市・兼田弘美)
年をとって人格が丸くなったのかと思っていたのは間違いだったようです。体力の衰えが憎しみなどの感情に反応しなくなったとこの句は言っています。その
とおりのような情けないような。
◆腰紐の一本あれば男なんて(時実新子)
腰紐一本で何をしようとするのでしょう。新子さんの句は恐ろしい。
◆衰えを鏡に見たり見なんだり(時実新子)
老いても鏡を見るのが楽しみという人はいるのでしょうか?
老いてシミの出た顔を見るのは嫌なもの、筋肉の垂れ下がった身体を見るのは嫌なものです。それでも女性は顔を鏡に写さなくてはならないもののようです。
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