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11/07/22 佐野洋「終(つい)の希(のぞ)み」その2
 1997年に発生 した東電OL殺人事件 と呼ばれる事件ではネパール人が逮捕され無期懲役刑が確定し現在服役中です。
 被害女性は高学歴のエリート社員、父親も東京電力の幹部だったと言われています。最近ではこの父娘は原子力発電に反対?消極的?な立場だったと報じられ ていました。

 その事件で、この時期に、被害者の体内に残された体液が受刑者のものとは違う第三者のものであったとDNA鑑定の結果が明らかになりました。

 被告に有利な物的証拠は隠し、被告に不利な状況証拠だけで犯人にでっち上げる警察の常套手段でまた冤罪事件が明らかになりました。

  残日録(11/07/07)で紹介し た佐野洋さんの終の希みの続きを書いて みます。

◆朝の楽しみ
 お婆ちゃん子であった多恵が出会った老女について「新しいおばあちゃん」と題する作文を町の広報誌に投稿したことから話が始まり、広報誌の編集部の男性 がこの作文を読み進んでいくという構成です。

 2学期が始まったある日、休み時間に他愛のない遊びの罰ゲームとして窓の下を通り掛かった人に「おはようございます」と挨拶をすることと提案したのはみ んなと馴染めない少女だった。
 多恵はゲームに負けて窓の下を通りかかった老女に「おはようございます」と挨拶をした。老女も挨拶を交わし子どもたちとの交流が始まります。
 地方紙の片隅にその老女と思わしき人が交通事故に遭って入院したとの記事が出た。心配した多恵は。

 孫を思う祖母の良かれと思った策が意外な方向に発展します。

◆饒舌なバス
 定年後も「部長待遇顧問」の肩書きで会社に出ていたが、それも65歳までで今は妻と二人の家でぶらぶらしている矢島の経験談。
 碁仲間の家に行くのに利用するワンマンバスの船山という運転手のアナウンスは丁寧で親切そのものであった。碁仲間はそんなに良い運転手ならバス会社に知 らせて やれば本人も喜ぶだろうと手紙を書くことを勧めた。勧めに従って書いた手紙に関して尋ねたいことがあると警察官が尋ねてきた。バス会社に「船山運転手のせ いで一生を 曲げられた。船山をすぐに辞めさせろ。要求に従わないならそれなりの制裁を加える」という内容の脅迫状が届いたとのこと。

 若い人の淡い恋心が問題を起こした。

◆終(つい)の希(のぞ)み
 検診に訪れた病院で出会った会社の先輩の終の希みは他人のセックスを覗き見することだという。
 以外や以外のどんでん返し、でも今一つ切れ味を感じられませんでした。

◆奨学生候補
 同じ会社に勤めていた3人のゴルフ仲間が宝籤が当たったら財団を作り将来有望な青少年に奨学金を与えてはどうだろうかと相談していた。
 通り掛かりに出会った親子、小学生の少年は「ごーよん、ごーろく、3028」と2桁の九九なるものを唱えていた。この少年に奨学金をと親子に接触するの だが。

◇2桁の九九
 54×56=3028だそうで、「ごーよん、ごーろく、3028」と覚えるそうな。
 Amazonで調べると「脳 をきたえる「2ケタ九九」ドリル」などたくさんの2桁の九九の本があるのに驚きました。

◇老人の日常
 この本の中に出てくる老人は大会社に勤めていて、定年後も社友、顧問などと厚遇され、会社の元同僚たちと趣味の交流があるという私には考えられない人生 を生きている人ばかりです。
 これくらい余裕がないと推理小説の登場人物にもなれないのかと僻んだりしていましたが、この話に登場する坂口の生活には共鳴するところ大でした。
 妻を亡くし息子夫婦と一緒に暮らす坂口はこんな風です。

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 坂口の家の夕食は、だいたい、午後八時ころから始まる。息子の隆一の帰宅時刻に合わせているためだ。朝は、隆一が出勤したあと、坂口自身がトースト・パ ンと目玉焼を作り、昼食は隆一の妻沙里がスーパーで見繕った弁当で済ます。だから、家族三人が食卓を囲むのは、夕食だけということになる。
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◆警戒! 褒め言葉
 妻の甥の家族が同じ沿線に引っ越してくるという。甥の息子新一が転向して通う小学校の学区内には「褒められたら考えよう」という変わった張り紙がされて いるという。
 新一は前の学校の友だちと分かれるのが嫌で引越ししたくないという。
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