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04/12/09 閘門(こうもん)

 本題に入る前に、前回の「曖昧な表現が本質を隠す」の続きを。

 NHKのチーフプロデューサーが、架空の発注をし支払い金を自分のポケットに還流させていた事件の続報で、詐取した金で女性と海外旅行をしていたとの報 道がありました。

 朝日新聞は「・・・知人の女性とたびたび出かけていたという。このほか、土産として腕時計などのブランド品を多数購入・・・」(04/12/4付け) と、”知人の女性”と表現を曖昧にしています。http://www.asahi.com/national/update/1208/017.html
 世の中の常識ではこのような女性を「愛人」と呼ぶのではないでしょうか。

 夕刊フジは「磯野克巳容疑者(48)が着服した金で愛人同伴の海外旅行に頻繁に出かけ・・・」と”愛人”との表現を使っています。http://news.goo.ne.jp/news/fuji/geino/20041209/20041209-f-21.html

 ゴシップを追いかけるタブロイド紙の方が、本質的な報道をしています。
 不必要な容疑者バッシングは、ことの本質を見誤まらせることとなりますが、キチンとした表現を使ってほしいと思いました。

 さ て、先日宇治川あたりをサイクリングしていて、京都の伏見で「三栖閘門(みすこうもん)」を見つけました。近くにあった「三栖閘門資料館」(http://www.misu-museum.jp/index.html) を見学し、「閘門」の働きや機能について知ることができました。

 帰宅後、少し調べると結構面白いのでまとめてみることにしました。今回は中途半端ながら閘門について書いてみます。

◆閘門の歴史と役割
 閘門は、簡単に言えば「運河・堰などで水量を調節するための水門であり、水位の高低差の大きい運河や河川などで、船を行き来させるの施設」のことです。

 こちらに全国の閘門の所在地 などを不十分ですが整理しましたので見てください。
 まず、目に付くことは所在地ですが、利根川などの大きな河川の流域で稲作の盛んな地域と、江戸時代以降海運が盛んな都市部に分布していることがわかりま す。
 もう一点は、建設時期ですが、18世紀半ばから20世紀初頭にかけてたくさん作られています。鉄道網や道路網の整備が進むと衰退していきます。

 日本の河川は、農作物に恵みの水を供給し、山や野の産物を下流に運ぶ道でした。また、恵みの川は、命も財産も一度に奪ってしまう暴れ者でもありました。
 私たちの祖先は、そんな川の恵みをより豊かに使うために色々の工夫をしてきました。

 ○下流への水量を調節するための堰をつくる
 ○農地を灌漑するための堰をつくる
 ○逆流による水害を防止するために水門をつくる
 ○内陸からの輸送のために運河をつくる

 ところが、このような設備をつくると、水位に高低 差のある場所ができてしまいます。
 例えば右の絵のように川に堰を作ると、上流部と下流部に高低差ができてしまいます。そうすると、この川を船で行き来することができなくなってしまいま す。

 そこで、考え出されたのが「閘門」です。

◆閘門の仕組み

@前扉を開けます



C閘室に水を入れ水位を上昇させ ます


A船を閘室に進入させます



D後扉を開けます


B前 扉を閉めます ↗



E船 を進行させます


 子供の頃に習ったスエズ運河の仕組みですよね。

◆堰と閘門
 多くの堰(洗堰)は、魚道と閘門がセットで作られてい ます。
 ex.長良川河口堰等



◆陸閘門(おかこうもん・りくこうもん)
 今までの閘門とはまったく逆の発想の閘門です。
 線路や道路が川(橋)を渡ります。異常時にこの川の水位が堤防を越えるような場合、堤防を高くすればよいのですが、元々あった線路や道路を嵩上げするこ とが困難な場合、陸閘門が作られます。
 身近では、国道2号線の淀川大橋が有名です。
 広島県三次市と島根県江津市を結ぶJR三江線は、江の川に沿って走っていますが、4箇所も陸閘門があるそうです。

左は道路を正面から見た絵、右は 道路を横から見た絵
 @通常時
   防水扉は開いており橋を渡って通行できます。

 
 A異 常水位時
   異常水位が予想される場合は、防水扉を閉めて、川の越流を防止します。
   橋は通ることができません。

◆閘門の今後
 東京都の小松川閘門(通称荒川ロックゲート)の建設や、淀川大堰・閘門の計画等、震災などの大災害時の物資輸送のルートとして、水上輸送が見直されてい ます。
 淀川大堰・閘門構想は、大阪市の長柄辺りにある大堰のために大阪湾と上流部の船の行き来ができなくなっています。これを解消しようとする計画です。
 先人の知恵が、今また輝いてきます。

◆ミス テリー「閘門の足跡
 Webで”閘門”を検索していましたら、閘門を冠したミステリーがありました。Ronald A. Knox氏はキリスト教の司教でミステリーのフェアプレイを強調された方とのことです。その内に立ち読みでもしたいものです。

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