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06/03/30 昭和15年3月30日

 山頭 火の日記です。(山頭火の本12「一草庵日記」より)

 三月 三十日 曇、そして雨。
 朝寝、朝焼けはうつくしかつたが雨になつた。何となく憂鬱。
 やうやく刻煙草を探しあてたが。あやめ十二銭では困る、貧乏人が金持のまねをするやうな生活はいやだ!
 食べることは大切だが、食べることにとらへられるな。
 裁く勿れ、自分を裁いても他人を裁くな。
 反省して恥多し、悔多し、恥じない生活、悔いない生活、さういふ生活を生活したい。

 先 日、久し振りに山頭火の本を読み返してみて、山頭火の言葉が新鮮に素 直に伝わってきました。

 山頭火は放浪の果てに安住した山口県小郡町の其中庵から湯田温泉での風来居を経 て、死を覚悟し死に場所を探す放浪の旅にでます。
 昭和14年9月、旅立つ山頭火の心境です。
 ”柳ちるもとの乞食になって歩く”

 この旅の途中に、鉄鉢と法衣を句友に形見として残し、自らはただの乞食姿での旅だったそうです。

 四国遍路の末に松山に滞在した山頭火は松山高商(現:松山大学)の教授であった高橋一洵さんの世話により終の棲家となる庵(一草庵)を結びます。昭和 14年12月15日のことでした。
 ”おちついて死ねさうな草枯るる”

 冒頭の日記は翌年春のものです。

 この日(3月30日)の直前まで大山澄太さんたち句友が松山に来て、大いに飲んで大いに語る日が続いていました。
 そんな中、27日の日記には、
 (仲間と別れ、ひとりさびしく庵に帰り)「酔ざめのはかなさ、せつなさ、自から責めて自から詫びた!」と書かれています。
 少しはしゃぎすぎた自分を責めています。

◇刻みたばこ
 刻みたばこから紙巻たばこに変わる時期に山頭火は刻みたばこが好きだったようです。この頃売られていた刻みたばこは「あやめ」や「はぎ」という銘柄で、 前後の日記には刻みたばこを探し歩き刻みが中々手に入らないことが書かれています。
 この頃の物価は「理髪:30銭」「(道後温泉の)湯銭:4銭」(23日の日記)だったそうですから「あやめ:12銭」は金持の嗜好品だったのでしょう か。

◇「食べることは大切だが、食べることにとらへられるな」
 難しい問題です。
 人は何のために生きるのかと言うたいそう難しい問題です。
 山頭火も時々は過食気味だったそうです。私も口寂しく過食気味の毎日です。

◇「裁く勿れ、自分を裁いても他人を裁くな」
 私たちは自分のことをさておいて、人のことを批判することが往々にしてあります。
 そして、また自分の悪さを裁いて自己嫌悪に陥ってしまいます。

 12日の日記
 「伊予路の春は日にましうつくしくなります。私もこちらに移つて来てから、おかげでしごくのんきに暮らせて、今までのやうに好んで苦しむやうな癖がだん だん矯められました。・・・
 おちついて死ねさうな草萌ゆる」

 山頭火は「好んで苦しむやうな癖」があります。

◇「反省して恥多し、悔多し、恥じない生活、悔いない生活、さういふ生活を生活したい」
 来し方を振り返れば、恥多く悔い多いことばかりです。
 遅ればせながら残り少ない人生を、恥じない生活、悔いのない生活を送りたいものです。

 この日記から凡そ半年後の10月11日未明、山頭火は一草庵で事切れて発見されています。

◆家族 の犯罪
 親族、家族が犯した犯罪に、肉親や家族はどこまで責任を持たなければならないのでしょうか。
 「残日録」(05/03/08)で取り上げ ました円地文子さんの「食卓のない家」で、犯罪を犯した長男に対して父親は「成人に達した息子の犯罪は本人の問題で家族には関係な い」と毅然とした態度で社会への謝罪も息子への援助もしませんでした。
 このことから家庭が崩壊していくようなストーリーでした。

◇朝日新聞社・社長の長男逮捕
 朝日新聞社・社長の長男が、麻薬取締法違反(使用)と大麻取締法違反(所持)で逮捕された事件で、父親は「息子の愚かな行為に驚いております。本人がき ちんと責任を負い、法に従い、罪を償ってほしいと思います」というコメントをだしています。

 朝日新聞社広報は、「この件は社長の進退と関係ありません」「長男とはいえ、35歳の独立した人格の社会人が起こした事件であることを理解してほしい」 と説明している。

 子であれ、親であれ成人の犯した罪は本人が償うべきものであり、家族とは関係ないものだと私は考えます。
 朝日新聞の社長は是非、この態度を貫いて欲しいと思います。

 「社長進退と関係ない 事件知った時期答えず」(北海道新聞 2006/03/28)

◇耐震強度偽装の元建築士の妻が自殺
 痛ましい事件です。
 偽装事件の発覚当時は、ペンを持ったお巡りさんたちに四六時中自宅を監視されている「軟禁」状態だったのでしょう。
 元々、精神的に不安定だったという彼女をさらに死の淵まで追い込んだのはマスコミであるような気がします。

 この報道で救われたのは、見た限りの報道では元建築士は実名でしたが妻は匿名報道されていたことです。

 「○○元建築士の妻が自殺か・マンションから飛び降り」(日本経済新聞 06/03/29) ○○は実名。

◆ライ ブドアの監査人、解散へ
 ライブドアの粉飾決算を見逃していたのか、グルだったのか、ライブドアの監査人だった港陽監査法人が6月末で自主解散するそうです。
 ライブドア事件の発覚以後、契約企業から契約打ち切りが相次いでいて存続できなくなったようです。

 港陽監査法人は「起訴事実の対象であるライブドアの04年9月期決算の監査証明をおこなっていた事態を重く受け止めるとともに、監査法人としての使命を 果たせなかった社会的責任を痛感している」といっています。

 木村建設等が耐震強度偽装をするために自分たちの意のままになる建築士を使い続けたように、ライブドアも港陽監査法人を使ってきたのでしょう。
 粉飾決算は監査人の協力無しにはできません。粉飾会社と監査人は共犯関係にあります。
 港陽監査法人も裁かれるべきだと思います。
 
 「港陽監査法人、6月に自主解散 LD事件後打ち切り次々」(朝日新聞 2006年03月28日)
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