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07/12/15 時 実新子「悪女の玉手箱」
 時 実新子さんのエッセー「悪女の玉手箱」を紹介 します。
 時実新子さんの川柳はいくらか紹介していますが、エッセーを読むのは初めてです。

 本書は三部構成になっていますが、各部の趣は少し違います。
 「懺悔の値打ち」は西日本新聞に02年に2ヶ月連載されたもので、時実さんの結婚、家出、再婚など少々重い話題が多く取り上げられています。
 「笑いの値打ち」はタイトルどおり、少し軽めのテーマが中心で99年〜02年にスポーツ新聞等に単発で掲載されたものです。
 「涙の値打ち」は、老いや死をテーマにしています。

◆日本語乱乱
 言葉は生き物であり変化して行くのは当然と思っていますが、最近の日本語の乱れには付いていけないものもあります。
 花に水をやる、犬に餌をやるが、敬語の「あげる」が使われています。
 「ら」抜き言葉は、テレビに出る人たちも当たり前のように使っています。

 「私って人は・・・」という言葉について、「どうして、『私って人間 は』といわないのだろう。ホモ・サピエンスで括(くく)れば『人』も『人間』もいっ しょじゃないか、言われても、どうも耳障りがわるい・」と書かれています。
 そのとおりですね。

◆八十になってごらんよ息子たち
 時実さんの句ではないそうですが、「八十になってみなければ八十歳のつらさはわからない。/エイジレスで生きているつもりでも、加齢はひたひたと見を侵 す。」と書かれています。

 加齢は若い時には見えなかった物を見させてくれるような楽しさもありますが、体力や知力の衰えは避けがたく辛いものです。

◆人物観察
 ご主人に付き添っての病院の待合室で人物観察をされています。
 「平均三十分で人間はもぞもぞしはじめることがわかったのもそのひとつ。どんなにおすましのお嬢さんも動く。/動かないまでもストローのようなため息を 吐きはじめる。」

 電車の中の向かいのベンチに座る人を見るのが好きです。
 どんな仕事をしている人なのか、結婚しているのか、子供はいるのか、、、
 また、母と子の二人を見て、父親の顔を想像するすることも楽しいものです。

◆エンム
 執筆時の時実さんは70歳を超えておられたはずです。
 「エンムをみた」「私もみた」とおしゃべりをされるような友だちがおられるそうです。

 「(略)釘を踏み抜くほどの歓喜へのぼりつめることが一年に二、三度はある。/その相手は言えない。いえば艶夢は玉手箱の煙となるからだ。つやのあるゆ めによって、老女は一人を愉しんでいる。」

 老人にも性への要求があることは楽しいことです。
 先の文章に続いて「そう思うとき、どの老人もいとおしい。生きるっていいなあと、しみじみ思う。」

◆投げられた茶碗を拾う 私を拾う
(時実新子)
 時実さんの前夫は、気に入らぬことがあると時実さんに向けて茶碗を投げられたそうで す。
 「『死ね』と思わなかったと言ったらウソになる。ニコニコ笑い ながら許して、許しながら軽蔑(けいべつ)する茶碗の欠片は私の腹中で山をなした。私だって虫の居処(いどころ)がある。

 「どうしてもう少し親切にできなかったのかと悔しい。辛抱して辛抱して、もう限界だったのよ、と自分をなぐさめてみるが、後味のわるさは拭えない。もう 少し、だったののだもの。」

 わたし薄情 だろうかだろう 春あらし(時実新子)

 他の章で、再婚された現在の夫について「現在の夫が何かにつけて前妻と私を比べることがあるように、私も長短見比べている。しかしながら今の夫は私を叩 かない。茶碗を投げない。これ以上のしあわせを、私は望まない。」と書かれています。

◆愛咬やはるかはるかにさくら散る(時実新子)
 新子川柳と作句された年齢です。
 39歳で「死」を詠んでおられたのです。

 柩ひとつ消えなんとして登り坂(39歳)
 薄(すずき)かるかや死んでゆくのは誰が先(39歳)
 妻をころしてゆらりゆらりと訪ね来よ(46歳)
 れんげ菜の花この世の旅もあと少し(49歳)
 愛咬やはるかはるかにさくら散る(54歳)

 サイン会で一番望まれる句は「
愛咬やはるかはるかにさくら散る」だそうです。
 サインを依頼されるのは女性でしょうね。逞しいことです。

◆戦争
 9.11テロについて「私は思う。本土の、しかも喉首をドカンとやられたアメリカは、その痛みが腹立ちが悲しみがどんなものかが、初めてやっとわかった だろうと。」と書かれています。

 そして、「地球という星の中で殺し殺される愚かさ。戦争のほとんどは男たちの『戦争ごっこ』が元凶である。いかなる理由もそこに帰結する。/男たちよ 死守は美徳ではありません。」

 平和うれしい 恋に泣いたし子も産んだ
(時実新子)
◆知事 候補 民(みん)にあわせて低レベル
 自民党大阪府連は、大阪府民を馬鹿にしています。
 知事候補者を擁立するのに、多くの似非文化人やタレント文化人に声をかけ、挙句は弁護士資格をもつタレントを担ぎ出しました。

 民主党が相乗りしないことだけが、まだましなことでしょう。

◆天満橋の駐輪場
 大阪・天満橋の駐輪場を以前(残日録 06/05/31)に紹介しましたが、新たに駐輪場を見つけましたので紹介します。
 場所は土佐堀通りのOMMビルの東側で、駐輪用のラックに乗せるタイプです。
 料金は24時間毎に150円、90分まで無料です。
 屋根はありませんが、安くて便利ではないでしょうか。

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