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10/06/14 朝日俳壇、歌壇より

 14日付けの朝日 新聞の俳壇、歌壇より気になった句や歌を紹介します。

◆朝日俳壇
◇十薬の襟を正して咲きにけり(東京都・石川理恵:大串章 選)
 日陰に咲く十薬の白い花弁は「襟を正す」に相応しい白さです。襟を正すべき人の多い世の中です。
 私は十薬の白い花弁を見ると糊の利いた女学生の制服の白い襟を思い浮かべます。

◇いつの世も見えぬものあり蟻地獄(東京都・石田靖子:大串章選)
 そうですね。私も蟻地獄に何度か滑り落ちました。

◇あぢさゐに香りをつけてみたきかな(調布市・赤羽啓山: 稲畑汀子選)
 紫陽花には香りを付けたくなりますね。
 下衆は私は芳香剤の香り程度しか思い浮かべられませんが。

◇何もかもいきいきさせて若葉雨(福知山市・宮本幸子:稲畑汀子選)
 そろそろ若葉の色が濃くなりすぎて透明度がなくなりつつありますが、雨に濡れると生き返るようにきれいに発光するようです。
 きっと「何もかも」には「自分」も入っているのでしょう。

◇空襲の語り部も減り夏来る(横浜市・下島章寿:金子兜太選)
 昨年の広島原爆忌に被爆の語り部・梶本淑子さんの話を聞きました。お話の中でも年々被爆体験者が高齢や原爆症により亡くなられていることを話されていま した。

◇恋猫やこのわが身にも覚えあり(川崎市・渡辺蝶遊:金子兜太選)
 楽しい句です。発情期の猫のようなそんな昔を懐かしく思い出しました。
 選者の評に「九十歳半ばにしてこの戯りあり」と。

◇竹皮を脱ぐや男の老い初めて(みよし市・稲垣長:長谷川櫂選)
 男が老いを感じるときは色々ありますが、私は脱衣場で鏡に映る緩んだ肌を見るたびに老いを感じています。老いも楽しと思ったことがありますが、近頃は老 いは寂しくも悲しいものに変わってしまいました。

◆難読漢字
 難しい漢字があるものです。とても読めません、使えません。

◇当然のやうに毎日蟾(ひき)の来る(野洲市・狩野龍生:金子兜太選)
 
蟾はヒキガエルのことのようです。

丿乀(へつふつ)と空中戦に負けし凧(豊橋市・河合清:長谷川櫂選)
 
丿(へつ)と乀(ふつ)で「へつふつ」と読むそうで、舟などが右に左に揺れるさまを表す言葉らしいです。
 
丿で左に傾いたり、乀で右に傾いたりするということでしょうか?

◆朝日俳壇
◇かのときは捨て石いまは要石ウチナーンチュは石にはあら ず(新潟市・伊藤敏:高野公彦、佐佐木幸綱選)
 普天間問題で、菅首相は鳩山内閣が決めた辺野古への移設を踏襲するそうです。鳩山前首相、民主党政権はやり逃げのようです。民主党政権にとって普天間問 題とは「アメリカ軍基地を沖縄に、辺野古に押し付ける」ことと同義でしかないようです。
 もうすぐ沖縄慰霊の日です。何度捨てれば気が済むのでしょう。

◇高齢者カップラーメン食べている悲しいゴミの出る月曜日(群馬県・小倉太郎:高野公彦選)
 4月26日の朝日歌壇にも同様の歌がありました。(残 日録 10/04/26
 <老い人の食の嵩知る収集日膨らみのない袋置きをり 児 玉正広>

 老人が金を貯めこんでいるとか、その金を吐き出させなどと乱暴なことをいう政治家がいますが、大部分の老人は少ない年金でその日暮の生活をしているので はないでしょうか?若干の「葬式代」は別にして。
 ゴミに現れる食生活の貧しさだけでなく、ファストフードの店やコンビニ弁当で済ますような生活は老人を大切にする社会とは思えません。

 映画「いのちの作法」や
い のちの山河」のモデルとなっている岩手県沢内村(現西和賀町)の元村長・深澤晟雄(ふかざわ・まさお)さんの言葉 に「お年寄りを生産能力がないといって粗末にする、そういう姥捨て山のような考え方では社会の秩序は保たれません」があります。
 老人にこそ日本国憲法第25条が必要なのです。
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第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
    2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
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◇「少年兵九条を抱いて放さない」一句残して夫は逝きける (秦野市・相原伸子:高野公彦選)
 よい句を残されて逝かれたのですね。色々と解釈できる深 い句だと思いました。

◇ふるえても右手右足自分なりとうに桜は散ったと言うが (小山市・内山豊子:佐佐木幸綱選)
 脳梗塞で麻痺が起こる怖れはずっとあります。
 不自由になった手足だけれど、それも自分の一部に違いなく愛しいものです。

◆被爆者名簿
 原爆死没者名簿の「風通し」を詠んだ歌がありました。
 今年も広島では5月21日に、長崎では5月25日に原爆死没者名簿の「風通し」が行われました。
 広島には263,945人、長崎には149,266人の方の名前が記されているいるそうです。あわせて413,211人の人の命が原爆で奪われいるので す。
 「原爆死没者名簿に風通し」(中國新聞 10/05/21)
 「原 爆死没者名簿 初夏の『
風 通し』長崎 市」(西日本新聞 10/05/25)

◇薫風に白手袋して職員が被爆者名簿の「風通し」をす(三原市・岡田独甫:高野公彦選)

◇一枚をまた一枚が繰られゆく被爆者名簿に初夏の風(加賀市・敷田千枝子:永田和宏選)

◆口蹄疫
 鳩山内閣と東国原宮崎県知事の初動の遅さが口蹄疫の感染を広めたといわれています。
 当事者の畜産農家の悲しみはいかほどと思うばかりです。
 この悲しみを詠んだ多くの歌が入選していました。

◇幾千の牛の鳴き声轟かん鳴き交わし鳴き交わし殺されゆく(水戸市・檜山佳与子:高野公彦選)

◇豚といふ陽気なる奴牛といふ威ある生き物殺されていく(水戸市・檜山佳与子:高野公彦選)

◇愛称の牛の名よびて送りだす消毒粉のがらんどうの舎に(長崎市・松尾信太郎:永田和宏選)

◇殺処分待つ牛がふと飼い主にいつもの朝のように顔寄す(行方市・鈴木節子:馬場あき子選)

◇処分さるる牛大きなる潤み眼に何心無く犢舐むらん(
水戸市・檜山佳与子:馬場あき子選)
 水戸市の檜山佳与子さんは3首が入選していました。同じ題で3首も入選とはすごいですね。
 牜(牛偏)に売るという漢字の旧字の賣で
「こうし」と読み、そのまま子牛のことだそうです。難しい漢字です。

◇まっ青な五月の雨で匿しつつ牛も殺して豚も殺して(東近 江市・寺下吉則:佐佐木幸綱選)

◇牛なれば処分するとふ十万頭飼ひ主なれば男泣きする(福島市・鈴木悦郎
:佐佐木幸綱選)

 家畜の伝染病で社会も大騒ぎですが、中小零細の事業者の倒産や失業者にこれほどの関心が高まることはあるのだろうかとちょっと考えていました。
時 々読ませてもらう「五七五って」 というブログの5月23日の書き込み(雨の日曜日)にこんな記事がありました。
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 昨夜の母との会話。
 「サラリーマンが倒産やリストラで失業しても国が個人に補償するなんてほとんどないよね。でも農業や漁業だと問題になるよね。収入がなくなる点では一緒 じゃない?」と私。
 「農業や漁業は国全体の問題だからよ」
 「でも会社だって、人のためになる仕事をしているのに・・・」
 なかなか理解できない私です^_^;
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 複雑な気持ちです。

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