12/03/27 朝日俳壇、歌壇より
鬼の霍乱とでもいうのでしょう
か?すっかり風邪をひいてしまいました。
何年ぶりかの風邪は老いた身体には堪えるものです。
ホームページの移行も遅々として進みません。どうなることやら。
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日付けの朝日新聞の俳壇、歌壇より気になった句や歌を紹介します。
◆朝日俳壇
◇三月の瓦礫の上に三月来(福岡市・井上正和:金子兜太選)
選者は「三月十一日が過ぎていった。井上氏、『三月』だけで東日本大震災が如実に」と評されています。
3月11日という時間は「過ぎていった」。この怒りをどこに持って行ったらよいのやら。
◇福島忌ただならぬ世に老いにけり(いわき市・阪本玄々:金子兜太選)
震災、津波、原発事故を初めとして、この国の形が毀れようとしている。今生きる人間の一人としてそうはさせられない。私に何ができるか?と自問するばか
りです。
選者は「福島忌」、「東日本大震災忌」や「原発忌」の他にも新季語が生まれるだろうと言われていますが、忌日とは人が亡くなった日のこと、原発事故で死
者は出ていないと政府と東電は言うけれど。。。
◇焼蛤(やきはま)の輪唱のごと口開く(青梅市・市川山猿:長谷川櫂選)
蛤など高級な貝は食べられませんが、大浅蜊を焼いたものを食べるのが好きで偶に伊勢や淡路島に食べに行きます。大浅蜊は
焼く前に包丁で二つに切りますから「輪唱」の趣きはありません。今度は奮発して蛤を焼いてもらい「輪唱」を見学することにしましょう。
◇春の月閏日(うるうび)の何かを怖る(札幌市・樋山ミチ子:大串章選)
満月の茫洋とした明るさにも三日月の青みかかった色にもなぜか不吉なものを感じます。
閏日の月はどんな色だったのでしょうか?
◆朝日歌壇
今日の歌壇は、選者の佐佐木幸綱さんが休みのようで、馬場あき子さん、高野公彦さんと永田和宏さんの三人が13首ずつ選んでおられました。
◇夕まぐれ勤めし人を打つ雨にハチ公の眼は今日も濡れおり(鴻巣市・佐久間正城:馬場あき子選)
春の冷たい雨に打たれる労働者、無機物のハチ公の眼も濡れている。うまいなあと読ませていただきました。
民主党は労働者派遣法を改正すると公約に掲げて政権の座につきましたが、今は労働者や貧乏人から捲き揚げたカネを資本家や金持ちに貢ぐことにご執心で
す。
今日もハチ公の眼は怒りで濡れている。
◇初子産み機銃掃射をうけし夜の釜石の闇大津波の闇(山口市・弘津敦
子:馬場あき子選)
60数年の時を経て二度も生死の淵を経験された方の歌は重い。「闇」も深い。
敗戦直前の1945(昭和45)年7月、8月数度にわたり製鉄都市であった釜石に砲弾の雨が降り、750余の命が奪われました。
◇ワクワクをにじませせんべい手土産に友に会いに行く祖母は可愛い(三豊市・藤川侑子:高野公彦選)
可愛いおばちゃんですね。90歳を超えた私の母も数ヶ月に一度近所の友だち長屋の花見のような茶飲み会をしているようで
す。
◇サラ金とパチンコ店の看板の赤が向き合ふ 夜かうかうと(小樽市・山口順弘:高野公彦選)
都市部はともかく、地方都市の景観はサラ金、パチンコが貧しさの象徴のようです。貧乏人が収奪される現場を見るようです。
サラ金は、サラ金でなければなりません。サラ金業界は市民権を得ようと「○○銀行系」とか、サラ金を放送禁止用語として今では消費者金融などとマスメ
ディアに言わせています。
「放送禁止用語一覧」という
サイトに掲載された用語を見ていると、誰かの意思も垣間見えます。
◇きのうきょうあしたあさってやなさってそして一年、そして一生(福島市・美原凍子:永田和宏選)
リズムの良い歌です。「やなさって」とは関西でいう「しあさって」のことでしょうか?
◇記憶には時効がないからいつまでも赦してやれないあの日の私(高岡市・池田典恵:永田和宏選)
女性の歌。女は男の裏切りを決して忘れないものと読みました。是非、忘却という時効もあって欲しいと思います。
もっと深い歌かもしれません。読みきれないものですから。
◇家事ぎらいの私を承知で妻にしたあなたの不機嫌われは関せず(久喜市・加藤建亞:永田和宏選)
「われは関せず」とは、女性というかオンナは強いものだと思い知らされされます。
ネットでお知り合いの由弥子さんの<良妻の役も飽きたり猫柳>という句に、伊東類さんは「男性にとっては少々厳しいですか。そこまで言わなくてもと言い
たいですが、駄目ですか。理屈ではなく、風景で気持ちが言えたらいいですね」と講評されていました。
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