06/06/03〜06/04 佐賀・呼子・唐津

 久方ぶりの遠乗りです。
 6月1日、2日に博多での会議に出席する必要があり、久し振りに博多への出張となりました。
 週末の出張を利用して、九州のどこかにサイクリングしようかとぼんやりと考えていました。週末には雨との予報がだんだん良くなってきて自転車を持ってい くことにしました。

 長崎まで走り、映画「読書する日」で田中裕子さんが牛乳ビンの入ったバッグを担いで駆け上がった坂道などを見てみたいと思いましたが、長崎まで行くと博 多との往復が400Km近くなります。(「読書する日」の紹介は「残日録」(06/01/09) をご覧ください)

 もう少し、近場でと佐賀に「葉隠」の地を訪ねることにしました。(「葉隠」の紹介は「残日録」(05/04/07) にあります)

◆プロローグ
 仕事で福岡市内に2泊しますので、書類、パソコンと下着等の荷物があります。
 その上に、自転車とサイクリング用の荷物(ジャージー、靴、ヘルメットなど)を持っていかねばなりません。

 こんな段取りで移動しました。
◇サイクリング用の荷物は事前にホテルに送っておく。
◇自転車は当日の朝、新大阪駅の手荷物預かり所に預ける。
 新大阪駅1階の団体待合室からコンビニ(ハート・イン)の角を曲がったところに「手荷物預かり所」があります。
 料金は410円、営業時間は8時〜20時とのことでした。電話(06-6302-4538)で確認してください。
◇一旦出社し、新幹線乗車時に自転車を受け取りブリーフケースと一緒に博多まで移動する。
◇博多着後、自転車を組み立ててホテルにチェックインし会議に出席する。
◇土曜の朝に、仕事の荷物(パソコン、書類、スーツ、靴等)を宅配便で送り返す。

◆背振越え
 6月3日、ホテルで朝食を済ませて8時過ぎに出発します。半袖のジャージーでは肌寒く感じる気温です。
 R385を南下して東背振トンネル を越えて吉野ヶ里に向かう予定で走り出します。
 福岡市内はまったく土地勘がありません。とにかく南 方面に向かい、日赤通り(R385)との表示のある道にでました。このまま走ればよい とのんびり走っているといつの間にかr31となっています。どこかで道を間違えたようです。

 背振越えをあきらめて鳥栖から吉野ヶ里方面に向かうことにします。

◆高速道路?
 r31を二日市温泉を過ぎると鳥栖筑紫野道路(有料)に入ってしまいました。[軽車両進入禁止]の標識は見なかったはずですが、ビュンビュンとスピード を上げて走る車のそばを、白線だけで区切られた路側帯をチンタラ走るのは勇気のいることです。
 1Kmほど走った立明寺ICで下りることにします。
 ひやひやの5分間でした。
 帰宅後、調べると軽車両通行可能(20円)な道路でした。
 鳥栖筑紫野道路(かささぎ道路)のサイトはこちら。

◆吉野ヶ里遺跡

 立明寺ICを下り、むさしヶ丘という団地の中を抜け てR3にでます。やっと正規のルートに戻りまし た。
 R3・永吉の交差点を無理に右折してR34に入りま す。永吉の交差点はAの字型ででは2段右折ができませんでした。

 朝は肌寒かったのに日差しがきつく なってきて疲れが出てきます。オーバーヒート気味の身体にはペットボトルに入れた水を 頭や太ももに掛けて水で冷やします。
 鳥栖市からみやき町の中原(なかばる)という町のホームセンターでトイレ休憩です。スピードは出ていませんが、休まずに 走っています。
 この辺りでは「原」という漢字は「ばる」と読むようです。
 
 JR長崎本線・吉野ヶ里公園駅の先 を右折して吉野ヶ里遺跡がある吉野ヶ里歴 史公園入 ります。入場料は400円。
 駐車場のお姉さんに教えてもらった駐輪場は何故か遠いところにありました。でも、ここの従業員はみんな元気で挨拶してくれます。

 小高い丘に遺構から再現した建物が並んでいます。約2000年前の弥生時代、日本に稲作が伝わった頃の遺 跡だそうです。

◆葉隠の里

  吉野ヶ里歴史公園を横断する道路を西に、山本常朝が主君・鍋島光茂に殉じて隠棲し「葉隠」を口述したという庵跡に向かいます。
 長崎道の金立SA付近の黒土原(くろつちばる)という場所だと金立公園まできましたが、それらしい案内はありません。公園の管理事務所で聞くと「私も 行ったことはないが、もう少し 西に行って弘学館という学校の門を左に行く」のこと。

 長崎道の北側の側道を進んでいきますと[葉隠記念碑駐車場]と書かれた空き地があります。上に登ると弘学館という学校の正門に出ます。これを左とは学校 の敷地内なのかもっと上なのかよく分かりません。
 ここまで来て寄らずに帰るのも癪なのでどうしようかと思案しているところに近くの家の方が帰ってこられたので尋ねました。
 もう少し、西だととのこと。「何も無いよ」とのこと。

 道端に佐賀市教育委員会の案内板がありましたが、他には何も無い石段がありました。
 60段ほどの荒れた石段を登ると昭和10年に立てられたという記念碑があります。

 佐賀城下から10Km余り北に上ったところから更に小高くなったところに庵があったようです。
 大石内蔵助の使者として佐賀城下にやってきた
播 州赤穂・浅野家の在々奉行・渡部角兵衛は、黒土原に隠棲する山本常朝(つ ねとも)と出 会います。
 この石段を角兵衛も登ってきたのですね。(「残日録」(05/03/24) で井上ひさしさんの「不忠臣蔵」を紹介しています)

 さて、戦前は軍国主義の高揚のために利用された「葉隠」の発祥の地が案内の標識も無くひっそりと佇んでいることに何故か安堵しました。
 と言いつつも「インターネットタウンページ」で 「佐賀県、はがくれ」を引いてみるとこんなにもたくさんの「はがくれ」がありました。

 ▽住友生命保険・はがくれ支部[保険]
 ▽戦国焼鳥葉隠本陣[焼鳥店]
 ▽はがくれ[飲食店]
 ▽葉隠アパレル協同組合[縫製加工業]
 ▽はがくれ運輸[運送]
 ▽葉隠エンタープライズ[貸カラオケ装置]
 ▽はがくれ学園[福祉施設]
 ▽
はがくれ義肢製作所[義肢・装具]
 ▽
葉隠研究会[学術文化団体]
 ▽葉隠拳法道肥前鹿島道場[スポーツ施設]
 ▽葉隠商会[土木建築工事]
 ▽葉隠設備工業[管工事]
 ▽はがくれ荘[ビジネスホテル]
 ▽葉がくれ茶舗[茶卸]
 ▽はがくれテレビ小城[有線放送]
 ▽葉隠堂本店[菓子製造]
 ▽葉隠海苔販売店[海苔]
 ▽葉隠不動産[不動産取引]
 ▽はがくれプレス[クリーニング]
 ▽葉隠本陣[焼鳥店]
 ▽はがくれ本陣[焼鳥店]
 ▽はがくれ輸送[運送]
 ▽はがくれラーメン[ラーメン店]
 ▽はがくれ旅行社[旅行]
 ▽葉隠緑化建設[造園業]

 他にも「はがくれ牛」や「米」もあるそうですし、大 阪梅田には「葉隠」といううどん屋まであります。草葉の陰の常朝さんも苦笑されている ことでしょう。

◆佐賀・ちゃんぽん
 山本常朝さんの碑から南に下ると佐賀市街にでます。
 佐賀市街にはクリーク(水路)が廻らされていて、島田洋七さんの「佐賀のがばいばあちゃん」にも、ばあちゃんがクリークに流れてくる野菜を拾って食べて いたとの話が書かれています。(映画化され公開中です。「残日録」(06/01/15) でも紹介しています)

 佐嘉神社前から、ちゃんぽんで有名な「池田屋」を目 指します。場所は佐賀大学正門近くとのことです。
 城下の堀沿いにウロウロしながら走っていくと「池田屋」の看板がありました。お店はひっそりとしています。休みかな?
 近づいてみますと[営業中]の札がかかっています。
 2組5人の先客、ちゃんぽん並サイズ(600円)を注文します。

 キャベツとかまぼこの炒め物が載った太くて柔らかな麺と濃厚な味のスープです。
 すきっ腹にドスンとくる味です。
 テーブルのお酢をたっぷり入れて、一気にスープまで完食です。

 ちゃんぽんやカレーなども宅配、通販できるそうです。
 壁の芸能人の写真や色紙、佐賀市長の色紙までは少し濃すぎるディスプレイでした。
 営業は11:30〜15:30と18:00〜21:00まで、木曜定休日のようです。

◆唐津へ
 お腹の皮が張る とまぶたが緩むと言われていますが、お腹が膨れて眠くなってきました。伊 万里を経由して唐津に出ようと思っていましたが、あと100Km 近くはとても無理と、唐津へ直行することにします。

 佐賀市街から唐津に向かうR203にうまく入ることができず、小城市牛津辺りから晴気川沿いの道を北
上 します。土手上から見る佐賀平野は麦の穂が金色に光っています。麦秋です。

 くねくねとした里の道を走って東多久でR203に出ました。このまま道なり進んでいけば唐津につけます。ほっとします。

 その後は山間のだらだらとした上りを進み今日の最高標高・笹原峠(91m)です。
 峠を下る途中の「道の駅厳木(きゅうらぎ)」で一休みです。
 売店で売っていた呼子名物の甘夏ゼリー(260円)をいただきます。自然な甘さですが、疲れた身体には上品であっさりしすぎの甘さでした。

 JR唐津線が筑肥線と合流する辺り から、R203沿いの川も厳木川から松浦川と名前を変えます。もうすぐ海(唐津)で す。
 松浦川にかかる松浦橋のたもとにあるビジネスホテル に16時前に着きました。
 インターネット予約時に「自転車での投宿」と書いておきましたら、チェックイン時に「自転車はこちらに」と案内されたのが玄関脇の余りにも晴れがましい 場所でした。

 部屋に入り、ゆっくりとお風呂に入り疲れを取ります。
 窓からは松浦川越しに虹の松原が広がっています。
 建物も新しく、部屋もきれいで1泊4800円は格安のホテルです。ちなみにホテルの名前は唐津第一ホテルリベールでした。

 風呂上りにコンビニに出かけ弁当と缶ビールを買って部屋で一人酒です。木・金と大勢で美味しいものを食べ、中州の女性のいる店で飲みつかれた身体には ゆっくりとした夕食です。

 唐津市内では銀行のキャッシュカードで現金を引き出すのができずに粗末な夕食でした。銀行のATMは土曜日17時まで、コンビニには銀行のATMが置い ていません。(あとでセブンイレブンにATMがあることが分かりました)

 本日の走行距離は128Kmでした。

◆呼子へ
 呼子までは30Km足らず、海岸線を走るので少しの アップダウンは覚悟して8時過ぎに遅めの出発です。
 唐津市街には古い建物がそこここにあるそうです。
 走り出してすぐに旧佐賀銀行唐津支店の立派な建物が国道(R204)からも目に付きます。建物前の赤い郵便ポストも何とも言えずの雰囲気です。

 唐津市街から西唐津辺りまでは結構込んでいましたが、海岸沿いのR203はのんびりとした農村、漁村の風景の中の道です。
 アップダウンも酷くなくまずまず快適な道です。日差しはなく、ひんやりと少し肌寒い気候です。

◆呼子朝市
  東松浦半島を一周するR204から一気に坂を下ると呼子の街です。
 いきなり[朝市通り]と看板のかかった狭い露地があります。鄙びたおばちゃんたちの朝市かと思っていましたが、縁日のようにヨーヨー釣りや籤引きなどが 派手な天幕で営業しています。

 狭い露地を観光客がお土産のビニール袋を提げて歩い ています。

 自転車を押して奥に進んでいきますと直径が20Cm 以上もある大きなロープが道路に置かれています。近くの公民館の壁には[呼子大綱引 き]のポスターが貼られています。
 今日(6月4日)はその当日だったようです。小さな街だと思っていたのですが、派手な祭半纏を着た男衆が朝から一杯機嫌で歩いています。
 なおも進みますと[浜][中心][岡]と道路にペイントされています。浜組が勝てば豊漁、岡組が勝てば豊作という吉凶占いの綱引きのようです。


  港町の露地をぐるっと周って名物のイカを食べようかと、既に開店しているお店を覗いて見ますが、活け1 匹の姿造りしかありません。2日前に博多の料理屋で 姿造りを食 べていますので見送ることにしました。

 朝から何も食べていませんので何かお腹に入れること にします。浜通りに干物を焼いている店に粗末な椅 子と テーブルがあり、食べることができそうです。早速、寄ってみました。
 網の上にはイカ、サザエ、イワシ、 さばなどが乗っています。イワシとサザエを注文します。イワシは8尾で300円、サザ エは4個で500円と財布にも優しい価格です。

 表通りの「朝市」の賑わいを他所に、 店の親父さんたちと世間話をしながら、ひと時をすごしました。

◆再び唐津へ
 綱引き大会は12時からとのことで、11時前に唐津 に向かって出発します。
 同じ道を帰るのは芸がありませんが、お腹の膨れた身 体には疲れがどっと出てきています。
 左手に玄界灘を見ながら走ることに します。
 玄界灘は波も荒く、屋台石の七ツ釜、立神岩と自然が作った色んな景勝地があるようです。

 途中の串崎辺りには[串崎ケープホテル]と読める廃屋がありました。地 元では心霊スポットなのでしょうか?
 「夏草や兵どもが夢の跡」の雰囲気です。

◆唐津バーガー
 唐津市内に戻り、前夜宿泊のホテル前の松浦橋を渡り虹の松原の中の景色の良いR20
2を進みます。
 虹の松原は全国の○○松原と比較してもきれいな松林 ではないでしょうか?
 道路(国道202)の両側が深い松 の林に囲まれています。
 松の樹影が森の精のように見えます。

 今回のサイクリングで食べたかったものの一つに唐津ハンバーガーがあります。 この付近かと 公園を掃除しているおじさんに聞くと「私は行った ことがないがこの先の右側にある」とのことです。
 松林の中に[唐津バーガー]とペイントしたバスが停 まっています。50台くらい収容の駐車場には車が20台以上駐車しています。

 バスの乗降口で注文します。私はレギュラーのハンバーガー(230円)です。お揃いのTシャツを着たアルバイトの高校生?が車のナンバーを聞いてくれ て、出来上がりをお盆に乗せて駐車場を走っ
て配達 してくれます。

 パンの表面がパリッとしています。中には良く冷えたレタスがたっぷり、少し薄
いパティと甘いソースで美味しくいただきま した。

 バスの裏にアルバイトの高校生のも のであろう通学用と思われる自転車が4台ばかり置かれていました。微笑ましく感じまし た。

◆一路、博多へ

 R202に並行してJR筑肥線が走っていて、弱気の 虫が電車に乗ろうと誘いますが、コンビニのカキ氷や水分で誤魔化して走ります。
 アップダウンもなく快走路ですが、木曜、金曜と深酒と夜更かしの付けが身体に効いています。
 前原(まえばる)市辺りが電車への誘惑が強い場所でした。福岡市内に入ってからは少し渋滞気味の道路を右折車に気をつけて、前へ前へと進むだけです。

 15時40分、博多駅に到着します。
 取りあえずはパッキングを済ませて、お手洗いで汗を拭き取り一息です。ビールが美味しい。
 16時30分のレールスターで帰途につきました。

 本日の走行距離は124Km、2日間で252Km、まずまずの距離でした。
 初めての九州路のサイクリングは天候に恵まれて最高の旅になりました。
 吉野ヶ里遺跡、佐賀城址、佐賀市内のクリーク、池田屋のちゃんぽん、唐津、呼子、朝市、イカ(博多でしたが)、唐津バーガーと思いどおりに走って食べて 満足満足の旅でした。



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